必死のパッチで源河を上り切り、一気に下ったらさっきまでいた周りの人たちがいなくなっていた。後ろに下がったのか前へ行かれたのか、全く気づかなかった。つまり自分の脚はここで終わった。
ここからの残り10kmは今まで走った10kmの中で一番長くて苦しかった。脚どころか腕も腰も全てに力が入らない。補給ミスではない。アンパンも少しづつ食べていたし、ゼリーも2本飲んだし。とにかく全身が疲れきって首を上げるのさえ辛い。
だからメーターばかりを見ていた。100m進むごとにため息が出る。残り5kmの看板が見えても嬉しくも何ともない。だってその5kmが異常に長い。かろうじて追い風だったので35km/hほど出ていたが、爽快でもなんでもない。
誰かに「一緒に回して行きましょう!」と声をかけられた気がする。20人ぐらいの集団に抜かれた気がする。自分が交差点を通過するたびに、警察がわざわざ交通の流れを止めてくれる。沿道の人たちが応援してくれる。「ガンバレーー!!チバリヨーーー!」って。
「回さんでええよ。勝手に行けよ・・・・」
「・・・・別に止めんでもええよ。信号待ちするよ・・・・」
「もうええって・・・・。『おつかれさまー!』とかにしてくれよ・・・・」
フラフラになってゴールした。とは言ってもゴールラインがどこなのかさえわからなかった。パワータグの「ピッ」って音が聞こえた気がするから多分あの辺りだったのだろう。
名護市民会館の広場をフラフラと歩いていたら先にゴールしてたナカハラくんに声をかけられた。迷子になって不安なときに親の顔を見つけて安堵するような気分。2時間ちょっとしか離れてなかったのに、ものすごく久しぶりに会った気がした。
それからしばらく経ってイノウエさんがゴールした。そこからはもう3人で笑い通しだった。落車やケガ、DNFにならずにすんで本当に良かった。さっきまでの苦しさが、思い返すたびに楽しさに変わっていくあの感じは言葉では表しようがない。
自転車の楽しみ方はいろいろある。ツーリングが楽しい人もいれば機材に凝る人もいる。レースだってヒルクライムからクリテリウムまでいろんな種類がある。そんなたくさんの自転車の楽しみ方の一つに、「オキナワ」を追加したいと思う。それぐらいに中身の濃いイベントだった。これだけの為に1年を費やしてもいいと思った。
いろんな犠牲を伴うけれど、「オキナワ」はそれだけの価値があります。「オキナワ」に行ったら“格”が上がった気がします。「オキナワ」はエエとこです。なかなか難しいことかもしれないけれど、自転車仲間みんなで「オキナワ」を走りたい。
『来年も 行ったってもエエよ オキナワへ』
みんなありがとう!

↑ 苦楽を共にしたケルビム号。最新カーボンバイクをたくさん抜いたけど、ダブルレバーの旧型自転車にも抜かれた。自転車はエンジンです。

↑ 打ち上げ会場へ。たくさん写真を撮ったけど、何故かこのピンボケ写真がお気に入り。

↑ サンセット。我々を焼いた太陽は、今日も何事もなかったように沈んで行く。