オキナワレポート その3

 イノウエさんがいなくなってから約30kmの間、足の揃った10人パックで走行していた。高低図で見ると基本的に下りだが、細かく上ったり下ったりしているのでここはとにかくこの集団で距離を稼ごうと思った。どうやら他の人とも利害は一致するようで、上りの得意な人、下りの得意な人、それぞれの得意なステージで小さな逃げがあったりするが、結局また集団で走行する。

 この辺りからメーターの距離計が気になってきた。まだ全工程の半分ぐらいである。残りの距離に思いを馳せてガックリした。とにかく距離計を積算させることだけがこの区間の生きがいだった。

 海岸線まで下って少し上りになったときに、ついに集団がバラけて3人になった。他の2人は同じチーム。違うのは自分だけ。3人でローテしていても明らかに自分が引く時間が長い。まんまと作戦にハメられている。腹が立ったぜ。でもこんな2人、オレ独りでなんとかしてやる!そんな気持ちで漕いでいた。

 先頭に出て海からの強風にあおられながら走っていると、沿道の家からたくさんの人々が出てきてくれていて声をかけてくれる。その中に、自分の息子と同じぐらいの子が悲鳴に近いような大きな声で、私に向かって「ガンバレーーー!!!」って叫んでいた。

 その瞬間、熱いものが込み上げてきて涙が出そうになった。応援してくれて嬉しいってのもあるし、こんなとこまできて自転車で遊んでるっていう罪悪感もあるし、チームメイトがいないっていう寂しさもあるし、なんだかいろんな感情が一気に押し寄せてきた。ここから先は自分の喜怒哀楽のスイッチがおかしくなる。

 で、いよいよ源河の上り。距離は大したことは無いけど斜度が清滝並み。こう書くとこれまた大したことの無いように聞こえるが、ここまで必死に漕いできた者にとっては激坂以外の何者でもない。2回目の補給ポイントで水をもらった。

 長年使ってきたポラールのボトルを投げ捨てようと右手で掴んだその時、走馬灯のようにそのボトルとの思い出が蘇ってきて(ボトルとの思い出って言ってもなんてことはないが)急に寂しくなった。しかし水がないと走れない。愛用のボトルを断腸の思いで投げ捨てた。また泣きそうになった。感情の起伏が激しい。

 まだまだつづくぜゴメン。



 ↑ スタート前。ホテルの体育館で準備中。緊張のせいか全く会話がなかった(笑)。