幼なじみ

 私には、モノゴコロがつく前から家族ぐるみで付き合いのある幼なじみがいる。今は諸事情が重なり、連絡できない状況にあるが、2人が子供の頃は良く家族同士で旅行に行ったり、食事をしたりしていた。

 親によると私たちは、おもちゃやお菓子の取り合いなどで良くケンカをしていたらしく、どちらか一方が誕生日でおもちゃを買ってもらおうものなら、必ず買ってもらえなかった方が泣きわめき、それはそれは一時でも目を離せない程であったと言う。だからおもちゃは必ず同じモノを2つ買い、お菓子も全く同じモノを買い与えていたそうだ。


 ハナシはガラリと変わって・・・。

 5月5日は、私の息子と義理の弟の子供の初節句のお祝いをした。その時、嫁のおじいちゃんから(つまり息子達にとってはひいおじいちゃん)1万円ずついただいた。

 せっかくなのでその1万円でおもちゃを買いに行こうと、2家族でトイザラスに出かけた。義弟の子供、てっちゃんは乗って遊べるクルマを買ってもらっていた。

 私も同じものを買おうかと思ったが、私の実家に誰かのおさがりがあったのを思い出し、買うのをやめた。だから私は子供用の野球グローブが欲しかったのだが、「まだ早い」という嫁からのクレームがあり、それも買うのをやめた。

 トイザラスにはいろんなおもちゃが本当にたくさんあり、子供の日ということもあって家族連れで非常に賑わっていた。みなさんご存知(かどうかは知らないが)の通り、私はそういった「ベタ」なことが大嫌いである。

 「こどもの日」に「家族」で「おもちゃを買いに来る」なんて、ベタベタキーワードのオンパレードである。人の多さとおもちゃの多さも手伝って、私のアタマはオーバーヒート気味になり、「まあムリにお金使うこともないわなあ」と、結局何も買わずに店を後にしたのだった。

 嫁の実家に帰り、てっちゃんは早速クルマに乗って遊んでいた。それを息子がじっと見ていた。

 まだ9ヶ月やそこらの子供なので、「ボクもてっちゃんと同じの欲しい〜」などとゴネたり泣きわめいたりはしないが、もう少し大きくなったら自分だけおもちゃを買ってもらえなかったことに対しての不満を理解できるようになるだろう。

 みなさんも幼い頃、お年玉や誕生日などでおもちゃを買ってもらって喜んでいる兄弟や従兄弟を見て、ゴネたり泣いたりして親を困らせたことがあると思う。私は何故かその光景がキレイに蘇るのである。あの時幼なじみの喜んでいる顔、あの時泣きわめいた自分、あの時感じた悔しさ・・・。
 「もしかしたらお母さんはボクのこと嫌いなんちゃうか・・・」
 「もしかしたらボクは本当の子供やないんとちゃうか・・・」
 そこまで考えが及んでしまうこともあった。

 おもちゃだけではない。いろんなところからおさがりや中古品を集めてくる親のおかげで、ミジメな思いをたくさんしてきた。
 自分だけ古い絵の具セット。
 自分だけ古い自転車。
 自分だけ古い運動靴。

 そんな親からケチくさい性質だけをキッチリと受け継いでしまった私のおかげで、買ってもらうハズだったおもちゃを買ってもらえず、楽しそうに遊んでいる従兄弟の姿をじっと見ている息子をとても不憫に思ってしまった。

 だからと言って、何でもホイホイと買い与えるのもどうかと思うし。

 だからと言って、自分と同じ気持ちにさせるのもかわいそうだし。

 そんなことを考え、疎遠になった幼なじみに無性に会いたくなった子供の日でした。