ツイてないときはとことんツイてない

 昨日の事である。出勤して実家からしばらく走ったところでオカンからメールが来た。

 「あんた財布忘れてんで」

 今更Uターンするのもめんどくさいし、特に仕事中に現金が必要なわけでもない。「別にええわ」と返信し、そのまま出勤した。しかし今から思えば、これが全ての始まりだったかもしれない。

 オイル交換のクルマがやって来て私が作業をしていた。ウチの工場は新品のエンジンオイルを専用のタンクに入れており、それにはコックがついていてそれをひねって必要分のオイルをジョッキに注ぐ。ジョッキについている目盛りを見ながらコックの開き具合を調整していると、何故かいきなりオイルがドバーっと出てきた。コックが故障したのか、私が「開く」と「閉める」を見間違えたのか(多分後者)よくわからないが、とにかく私は顔から腕から胴体から足までオイルまみれになってしまった。

 かなりヤル気が失せてしまい、ホントに早退しようかと思うほどだった。スペアのツナギに着替えたいのだがそんな時に限って忙しく、着替えるヒマがない。結局最後までオイルまみれのツナギで体中ヌルヌルのまま仕事を続けた。

 仕事を終え、ヌルヌルの体をある程度ウエスとブレーキクリーンでキレイにし、着替えて自転車で帰った。その日は何だか調子が良かった。少々重いギヤでもグングン踏んでいけた。上り坂も快適だった。そんな矢先またパンクした!

 小遣い1ヶ月と3日分のミシュランプロレースに穴を開け、ついてに新品チューブにまで穴を開けてくれた!なんということか。自転車がキライになりそうである。

 なんとか修理し、阪奈道路の頂上までやって来た。ここまで来れば後は実家までほとんど下りである。位置エネルギーを使い果たす時だ。ハンドルの下を握ってさあ行こかと前方を見ると、なんと通行止め!

 土砂崩れで道路が寸断されていることは知っていたが、道路に覆い被さった土砂を片付けることぐらい1日あれば十分だろうとタカをくくっていたのが間違いだった。なんと土砂が崩れてきたのではなく、道路が陥没して下の田んぼに崩れているのだという。復興まで1週間はかかるらしい。汗だくでケンカ腰にしゃべる私に警備員のおっちゃんは丁寧に説明してくれた。

 せっかく貯めた位置エネルギーを帰る方向とは違う方向に使うのはとてもむなしい。何の為に私は上って来たのか。ハラが減ってフラフラになりながら再度別方向から山を上り、大阪側に下って来た。そしたら大阪一帯は雨!奈良側は降ってないのに大阪側は降っている。山ひとつ越えるだけでこれだけ天気が変わると天気予報もクソもない。

 それでもやっと実家に帰って来た。多分昨日の夜、大阪で一番頑張っていたヤツは、選挙の候補者でも支援者でも記者でも選挙管理委員会でもない。私だ。

 そして実家に着き自転車を降りようとするとクリートが外れない!ひっさしぶりの立ちゴケ。

 もーイヤ。