みなぎれば

 嫁の祖母に息子の顔を見せるためということで、この週末から3日間、嫁と義母さんと息子は田舎に帰る。

 「ツワリでしんどいもん」とか「宗ちゃんが散らかしてんやんか」などと難クセをつけて家事の手を抜くくせに、こんな時の段取りは素晴らしくテキパキ行う嫁には閉口する。まあグチはこれくらいにしておく。

 嫁の田舎は和歌山県の龍神村という所である。私も結婚前に一度訪れたことがあるが、山々に囲まれ、空気や川の水がとてもきれいで、温泉もあり、非常に田舎らしい田舎という感じのいい所である。

 私は当時買ったばかりのスペシャのMTBをクルマに積んで持って行き、龍神村の山々を走り回ろうと計画していた。嫁はその時泊まった宿に置いてあるレンタサイクルで付いて来させりゃいいか、と考えていた。

 しかしその旅館のレンタサイクルはただのママチャリで、しかもボロボロのサビサビ。周囲は山道ばかりだというのに変速機すらついていない。ていうかタイヤに空気も入っていない。

 そんなチャリンコで私の乗るスペシャのフラッグシップMTB『S−WORKS M5』に付いて来れるわけがない。しかし私は走り回りたい。
 「早よ来いや」
 「ムリやんか」
 「気合が足らんねん」
 「どこなと行ってしまえ」
 今思い返せばそのころから私と嫁の間には確執が生まれていたのかもしれない。

 それ以来龍神村には訪れていないが、先日地図を見ていると頑張れば自転車で行けそうな気がしてきた。みなぎってる時はどこへでも行けそうである。

 嫁は私が琵琶湖1周に行ってる間に田舎へ帰る。もし琵琶湖が中止になったら、一人で「目指せ龍神村みなぎりツーリング」でもするか。