影響されやすい嫁と下心見え見えの夫

 昨日の晩、ヨメコドモが寝静まってからツールドフランスのDVDを観ていた。

 1988年、ぺドロ・デルガドが総合優勝した年である。マイヨジョーヌを着て山岳ステージをアタックする姿は、私のように自分はクライマーだのスプリンターだの言って喜んでいるホビーレーサー憧れの走りである。

 そんな走りに興奮しながら喰い入るように観ていると、後ろから声がした。

 「・・・速いなあ」

 なんと、すでに寝ていると思っていた嫁が私の背後からデルガドのアツイ走りに目を輝かせているではないか。挙げ句には「アタシも坂道走りたくなってきたわ〜」と言い出す。

 なんだか嬉しくなってしまって、集団で走るときの戦法や駆け引き、チームタイムトライアルのルール、アルプスやシャンゼリゼの美しさなどをアツく語ってしまった。しかも嫁にしては珍しく「ふんふん」と私のハナシに聞き入っている。

 なんちゅう単純なヤツ!ここまで影響されやすいのなら10Sデュラエースやカーボンディープリムホイールやルック軽量ペダルなんか簡単に手に入るんちゃうん!?

 「ほらほら、今ハンドルから手ェ離してなんかやったやろ?あれギヤチェンジしてんねん。今の自転車はそんなんせんでも手元でチェンジできるやろ?」
 「ほらあれ見てみ。あのホイールはタイムトライアル用で空気抵抗を減らす為にあんなディスク型になってるんや」
 「あのハンドルのカタチ変やろ?前傾姿勢を取る為にあんなカタチやねん。オレもあれに似たヤツ作ったんやで〜」

 夜中だというのにぺちゃくちゃしゃべりまくった。よしっ、ここでもう一押しや。とりあえずは10速化が当面の目標や。「そんでやな。オレが欲しいのは・・・」

 嫁の方を見た。

 寝ていた。