『マスカレード・ホテル』 東野圭吾 集英社

 文庫版になったので購入(笑)。さすが売れっ子作家。次から次へと新作が出てくる。本屋を徘徊しているとハードカバー版の新作が平積みになって常に並んでいる印象がある。しかしファンであるとはいえ2000円近くする本をおいそれとは買えないので文庫になるまで待つわけだが、ハードカバー版など大きいし持ち運びに不便だし嵩張るし、あんなもん買う人なんかいるのだろうかと思ってしまう。
 
 都内で起きた連続殺人事件。死体と共に暗号メモが置かれており、それを解読すると次の殺人予告となっていた。次の殺人場所に選ばれたのは一流高級ホテル。捜査一課の刑事はホテルのスタッフに変装し潜伏捜査を行うことに。その捜査にあたる刑事の一人が新田浩介。そして新田を指導する係となったのが優秀な女性フロントスタッフや山岸尚美である。
 
 どうやらこの新田という人物が、東野作品には欠かせない「湯川学」や「加賀恭一郎」と並ぶ新しい定番キャラクターとなるようだが、先の2人の印象が強すぎてどうもキャラが弱いように感じた。同じ刑事という職業からか加賀恭一郎とどうもかぶってしまう。強いて言えば加賀恭一郎は手柄などにはあんまり興味がない庶民派であるのに対して、新田はもう少し若くて実績を得ることに貪欲なイメージ。
 
 物語の序盤は、ホテルにやって来る様々な客を相手に辟易する新田と、それを諭しながらホテルマンとしての接客を教えていく尚美のやりとりで進んでいく。しょうもない接客マニュアルよりも尚美のセリフを読んでいるほうが役に立つのではないかというぐらい、尚美の接客に対する考え方は素晴らしいと思った。同じく接客する私も学ばなければならない部分が多い。
 
 とんでもないクレームをつけてくる客、わけのわからないお願いをする客、本当に様々な客がやって来るのだが、それぞれの客との問題を新田と尚美が解決していく。それがまるで連続ドラマの1話ごとのくくりになっているかのようで、おそらく映像化されるのはそう遠くないであろうと感じた。
 
 事件は終盤に差し掛かり解決の糸口が見つかってくるのだが、序盤に現れた様々な客がしっかりと伏線になっていて、そのあたりはさすがだなと思う。ただ、事件の真相自体はそれほど驚くべきことでもなく、連続殺人をするほどの動機というのもちょっと弱い感じがした。もうちょっと濃い感じを期待していたので残念だ。
 
 続編(?)として、『マスカレード・イブ』という作品も売られている。通常ならばすぐに続編を読む私だが、他にも読みたい本があるし、またの機会でいいか。。。

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