『疾風ロンド』 東野圭吾 実業之日本社

 超危険な生物兵器が研究所から盗み出され、それをスキー場に隠したと犯人からメールが。場所を教えて欲しければ3億円用意しろという話になるが、その犯人が交通事故で死んでしまう。数少ない手がかりから無事に生物兵器を探し出し、スキー場を守ることができるのか!?というストーリー。
 
 以前読んだ『白銀ジャック』と同じような内容である。スキー場まるごと人質に取られた格好となったり、脅迫される側も警察に届けられない事情があったりなど。さらに登場人物までかぶっていたりして、記憶力が定かで無い私のような人間が読んだら、どちらが『白銀ジャック』でどちらが『疾風ロンド』なのか混乱するのではないだろうか。
 
 ただ、私は“スキーもの”がキライではないので、『白銀ジャック』にしろ『疾風ロンド』にしろ、そしてその前に読んだ『鳥人計画』にしろ、楽しく読ませてもらっている。特に最近は子供が小さいということもあり自由にスキーに遊びに行けないので、スキー気分が味わいたくなったら何度も読み返す。ストーリーや謎解きや登場人物などどうでもよい。ただ単純に白銀の上を滑るスキーの疾風感を感じられるだけで十分である。
 
 東野圭吾の趣味はスノボーであるということは有名だが、文中にもスキー場の経営難に伴う周辺地域の過疎化を憂う場面があったり、スノーボーダーやスキーヤーのマナーに関して言及したり、本当に彼はスキーやスノボーを愛しているんだなと思う。
 
 根津という名のパトロール隊員と、千晶という名の女性アマチュアボーダーが『白銀ジャック』と『疾風ロンド』に登場した人物である。これからも東野圭吾の“スキーもの”があるとすれば、スキーものの定番キャラとしてぜひこの2人を再登場させて頂きたい。