『新参者』 東野圭吾 講談社

 最近文庫本になったので購入。加賀恭一郎シリーズ。舞台は東京日本橋の旧い商店街。昔のおもちゃや駄菓子屋さん、老舗の店が並ぶ。大阪で言うと松屋町筋みたいな商店街のイメージかな。東野作品では同時期に『麒麟の翼』でも日本橋が舞台になった。あれも加賀恭一郎シリーズだった。下町の人情が加賀恭一郎シリーズにぴったり合うのだろう。それとも単純に作者のマイブームなのか。
 
 日本橋で起こったひとつの殺人事件。それを最近日本橋に配属になった所轄の刑事である加賀恭一郎と本庁の刑事が捜査するわけだが、通り一遍等な捜査をする本庁の刑事とは反対に、地道に地元の人たちと交流する加賀恭一郎。固い結束力にも似た下町の人情に新参者として取り入ることによって、捜査の足かせとなる謎を一つ一つ丁寧に解いてゆく。
 
 物語の構成が連続テレビドラマのようになっていて(現にドラマ化済み)、一話ごとに地元の人々との交流があり、下町故に存在する謎や誤解を解決しながら親交を深めてゆく。一つ一つは一見、殺人事件とは関係無いように見えるのだが、それぞれがしっかりと終盤に向かって生きてきて事件解決となる。しかも事件を解決するだけでなく、それに関わった人々の心の傷や誤解まで解決するあたり、いかにも加賀恭一郎シリーズである。
 
 最後の加賀恭一郎のセリフがイイ(笑)。