いつの間にか年上

 阪神タイガースの桧山進次郎選手(44)が引退を発表した。また一人球界のベテランが去っていくのは寂しい気持ちもあるが、いつまでもというわけにもいかず、若手に引導を渡すために身を引いたとのことである。お疲れ様でした。
 
 私も今年の8月で40歳になり、もしもプロ野球選手だったら確実にベテランの域に達する年齢である。気が付けばプロ野球選手のみならず、サッカー選手、ラグビー選手、バレボール選手、オリンピック選手など、そのほとんどが私よりも年下となってしまった。そりゃあ年齢を重ねていけばそういうことになるのは当然のことなのだが、幼いころからスポーツ選手に憧れていた私としては、テレビで大活躍するスポーツ選手の皆さんは「年上のおにいさん・おねえさん」であることが当たり前だったので、やっぱり私にとっては違和感があるのだ。
 
 こういう違和感を初めて感じた時は高校時代だった。高校野球選手が年下になり始めた頃だ。炎天下の甲子園で白球を追いかけるヒーローたちが私の年下となったのである。あんな素晴らしいプレーは私より年上のおにいさんにしかできないものだと思っていたのに、いつの間にか私より年下の1年生がピッチャーで活躍していたりする。
 
 今でこそ高校野球を観ると、「若いのに大したもんだな~」という感想を持つことができるが、やはり二十歳そこそこの頃はまだまだ高校球児と自分の現実年齢のギャップに違和感があり、高校野球を観なくなった時期もあった。ようやく30過ぎぐらいになって、高校野球をひとつの夏の祭典として楽しむことができるようになったと思う。自分の年齢が上がっていくに連れて、スポーツの見方が変わっていくのもなのだろうか。
 
 最近は私より年下の作家がヒット作品を飛ばす時代になった。小説家なんて、私より語彙が豊富で、私より文章力が高くて、私よりボキャブラリーが広く、そして私より年上で、もっと言えば自分とおじいさんぐらいの年齢差があるものだと思っていたが、自分の年齢が上がることによって、そういう(自分の中だけでの)常識が覆されていく。そういう違和感を感じ始めた今、年下の小説家の本を読む気になれない。先日知らずに読み始めたことがあったが、作者が年下だとわかった途端に(ストーリーは面白かったにかかわらず)つまらなく感じてしまった。
 
 高校野球を観なくなってしまった時期があったように、小説家の年齢が年下になるに連れて読書を面白くないように感じてしまう時期が来るのだろうか。今のところ、私より年上の素晴らしい「おにいさん・おねえさん」の小説家がたくさんいらっしゃるのでまだまだ大丈夫かとは思うけど、これが50台60台になった頃、果たして自分より年下の書く小説を、面白く感じることができるだろうか。自分の精神年齢を棚に上げて、そんなことを心配したりしてみる・・・・。