『阪急電車』や『ストーリーセラー』などの作家なのだが、何故かその名前は自分の中に残らず、「あー、これって読んだことあるけど有川浩なんやー」ぐらいの感じであった。ちょっと興味を持って見てみると、有川浩は次々とヒット作を世に飛ばし、ついでに映像化されまくっている売れっ子さんであった。なんかそんな感じで手に取った『県庁おもてなし課』。そういえばこれも映画化かなんかされてたように思う。まあそれはいいとして。
高知県庁に実在する、「高知の観光事業をどうにかしよう!」の趣旨で作られた「おもてなし課」がモデル。物語自体はフィクションであるとのことだが、高知県出身の作者は実際に高知県庁おもてなし課から高知県観光特使の依頼を受けており、しかもおもてなし課を題材に小説を書くというのも同じである。半分はノンフィクションみたいなもんか。
とにかく、高知県の観光事業を立て直そうと集まった「おもてなし課」であるが、今まで温々とお役所仕事ばかりやって来た人間の集まりであるから、何をどうしていいのかわからない。とりあえずの策として、その町出身の有名人著名人に観光特使となってもらい、その旨が印刷された名刺を作って特使に配送するということに決まった。
おもてなし課で頑張る若者掛水くんと、特使を依頼された売れっ子小説家吉門さんの掛け合いが面白い。そして脇役として登場する多紀ちゃんや佐和さんのキャラクターも爽やかで読んでいてとても気持ちいいのである。
基本的に物語は、迷走するおもてなし課がだんだんとしっかりしたものになっていく・・・という感じなのだが、その中には辛辣なお役所批判のような文章もあって、バリバリの民間で働く私としては気持ちよかったりもする。だけど頭ごなしに役所批判しているのではなく、この作者は本当に高知県が大好きで、本当になんとかしたいなという気持ちでこれを書いているのかなと感じた。
この作品がヒットしたことによって、高知県は全国的にその名を広めることができただろうし、私でさえ高知県に遊びに行ってみたいなと思ったぐらいだから、結果的にはおもてなし課が大成功したのだろう。まあ実際に行くかどうかはビミョーではあるが。
余談だが、私は恥ずかしながら有川浩が“女性”であることを巻末のあとがきを読むまで知らなかった。いや、そう言われてみれば、キャラクターのセリフや行動の描写がとても丁寧だし、特に女性キャラの行動や心境がわかりやすく書いてあるなと思っていたのである。そういえば『阪急電車』でも基本的にそれぞれの各パートで女性が大活躍している。だからと言ってこの作家の性別がどうのこうのと気になったわけではないのだが、「あー言われてみれば・・・・」と思う節は多々あるのである。
別に物語を読みながらこの作者が男性か女性かを当てるなんてことは重箱の隅をつつくようなことかも知れないけど、有川浩が女性であることを以前から知っていたならば、もう少し感想が違っていたかもしれない。いや、変わらんか(笑)。
“『県庁おもてなし課』 有川浩 角川文庫” への4件のフィードバック
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三匹のおっさんシリーズもゼヒゼヒ。
ねーちゃんが描くおっさんの描写がよいですよ。
うちの娘が有川浩好きなんでおれも貸してもらってよく読んでますわ。なんかほのぼのとしてて好きです。
ロラあにき、おっさんシリーズ以前から気になってました。またの機会に読んでみます。
すずひろさん、へー、読書家なんやね。子供から面白い本を教えてもらって読むってのはまた違う感想になるかもね。