『午前0時の忘れもの』 赤川次郎 集英社

 本屋に平積みで展示してあったので手に取った。新作というわけではないし、改めてなんかの賞を獲ったというわけでもなさそうだけど、本屋が勧めるなら読んでみよかと。
 
 高速バスが湖に転落して多くの乗客が死亡。残された遺族や恋人たちは心にポッカリと穴の開いたような日々を過ごしていたが、事故から1ヶ月後、死者からのメッセージが遺族や恋人たちに送られ、深夜のバスターミナルに集合。そこで繰り広げられる不思議な出来事を描くファンタジー小説。
 
 素敵なお話だった。もちろんありえないことなんだが、生きることの切なさとか人を愛することの素晴らしさなんかが描かれていて心が暖かくなる。
 
 ……な~んて背表紙のあらすじみたいなこと書いてちょっと赤面するわ。自分なりに感じたことを書く。赤川次郎は他にも何作か読んだけど、この人の作品には若い女性がメインになることが多いのかな。若い女性が好きなエロオヤジなんかなと思ったけど、セリフの短さとかテンポとかがほんとに若い女性が会話してるかのようなリアルさがあって、もしかしたら赤川次郎がオネエじゃないのかとさえ思う。ファンの方すいません(笑)。
 
 ちょっと前に小説に登場する若者って言うことが理路整然としてて語彙が豊富なんてことを書いたけど、それはやっぱり作者によって違うんやなと思った。赤川次郎はとてもシンプルなセリフばかりで小気味良い。セリフの後に「と、法子は言った。」とか「と、恵は言った。」という書き方が多くて、そこだけを意識して読んでると小学生の作文みたいに思えるのだが、それがまったく違和感なくて、文章を文章として読んでいるのではなくて、文章をまるで映像のように眺めていくような感じ。
 
 だからページにも余白の部分が多く、とても早いペースでページが進んでいく。登場人物の数もちょうど良くて、舞台もほとんどが実ケ原バスターミナルで終始するのでとても読みやすい。中学生とかが読んだらええんちゃうかな(笑)。★★★☆☆でした。