『歪笑小説』 東野圭吾 集英社

 読書感想文が続きますよ~(笑)。
 
 さて、今年の1月25日に第1刷が出たばっかりの「◯笑小説シリーズ」の最新版。怪笑小説とか毒笑小説とかがあって、これは「わいしょうしょうせつ」と読む。「歪笑」なんて言葉はないと思うけど、読んでみるとほんとに口元がニヤリと歪むような笑いが起こる。いつものような本格ミステリーではなくて、コミカルな短編集です。
 
 出版社と小説家との裏を暴露するような笑い話が12編あってお腹いっぱい。でも短編集とはいえ、それぞれのお話しの中で登場人物やシチュエーションは繋がっていたりしてたいへん楽しめる。小説家になりたいなーなんて妄想したことはあるけれど、やっぱりどこの世界も大変なんだなと思う。
 
 超売れっ子作家である東野圭吾自身が出版社の内部を暴露するなんてちょっとずるいなあと思ったりもする。そらあんたが書いたらおもろなるわみたいな。ここに登場する「灸英社(きゅうえいしゃ)」とは明らかに「集英社」のパロディであり、ハチャメチャな編集長とか売れない新人作家など、きっとモデルになる人物がいるのだろうけど、「東野さんに書かれたら仕方ないよな~まいっちゃうな~」であろう。
 
 「面白さが不謹慎さを圧倒的に抜いたからこそブラックジョークが成立するんだ!よほどのセンスがない限り手を出さないほうが賢明だ!」なんてツイートがあるけど、ほんとに東野圭吾はセンスに溢れてる。本格ミステリーも書ければ短編も書けるし、そんな才能に感心しながら読み進めたりすることもある。なんか完璧すぎて怖い感じもする。どれを読んでもハズレがなくて失敗しない。
 
 だからこそ、誰も知らない売れない新人作家の作品の面白さを探してみたいと思うこともあるわな。そう思えるようになってきたら私も読書中級者かな? 熱海圭介の『撃鉄のポエム』は読んでみたい(笑)。★★★★☆でした。