『風の中のマリア』 百田尚樹 講談社

 『永遠のゼロ』を読んでからすっかり百田尚樹ファンになってしまった。この人の作品は、取り上げられる題材(『永遠のゼロ』では太平洋戦争、本作においてはスズメバチ)をやたら詳しく解説してあるので、読了後はそれらのことについての知識が身に付く。かと言って眠たくなる参考書や歴史書ようなものではなく、しっかりとしたストーリーの中でのことなので、それほど違和感なく自分のボキャブラリーが広がるのだ。
 
 というわけで、本作はスズメバチが題材。ていうか主人公。スズメバチの中のワーカー(働きバチ)であるマリアちゃんの物語。スズメバチの巣の中は(一時期を除いて)全てメス。女の帝国である。ワーカーはオスと恋をすることもなく、当然卵を産むわけでもなく、命を賭けて女王バチを守り、幼虫達のエサを狩猟する。そんな本能に突き動かされる自分の運命を、時に誇りに思い、時に疑問に感じる、そんな女の子の物語となっている。
 
 スズメバチをはじめ、登場する全ての昆虫が擬人化され、もちろんセリフもしゃべるし物思いに耽ったりする。殺される直前には命乞いもする。だけど『みつばちマーヤの冒険』とか『バグズライフ』みたいにデフォルメされているわけではない。“おもくそ虫!”である。この手の作品は珍しいのではないだろうか。虫が嫌いな人はきっちりと嫌悪感を示すだろうし、シーズンになるとスズメバチと格闘しておられる某アニキにおいてはリアルにその黄色と黒のギラギラしたボディを思い出し、憎々しさで読み進めることができないかもしれない。
 
 百田尚樹にはこのような作品が多いそうだ。まだ読んでないけど、日本初のボクシング世界チャンピオンの話や多重人格障害者の話などもあるみたい。おそらくそれらも半分小説で半分解説書。予備知識がなければ「なんじゃこれ?」みたいに思うかも知れないが、私も百田尚樹のお陰で太平洋戦争のことに詳しくなったし、スズメバチのことにも詳しくなった。知ってます?働きバチって最後に女王バチを殺すんですよ~。知らんかったな~。
 
 ここまで持ち上げといて言うのもアレだが(笑)、『風の中のマリア』においてはちょっとストーリーの部分が弱かったかな?いかにもスズメバチの解説です!って場面が前に出過ぎてるとこがあって、物語の世界にふけってしまいたい自分としてはちょっと興ざめするとこもあったのは事実。百田尚樹を読むときはその辺の心の準備が必要だとわかった。ちょっと厳しめで★★★☆☆でした。

『風の中のマリア』 百田尚樹 講談社” への4件のフィードバック

  1. 王滝で噛まれ&刺されたのを機に買いました(笑)
    ゲゲゲのアニキにも読んで欲しいですね

  2. ●金剛あにき
    読みました?あにきたちはドエライ奴に刺されたんですね~(笑)
    ゲゲゲのあにきは読んでくれるでしょうか(笑)。

  3. ぢつは読みましたよ。読んでますますキャツラに憎悪を抱くようになりました(笑。
    多重人格の話は、取材後に小説仕立てにしたのかな?と思ったけど。
    本家の「ビリー・ミリガン」をアニキにぜひオススメ。

  4. ●さっすがロラあにき!
    読みながらアニキの孤軍奮闘する姿が浮かびました(笑)。
    百田尚樹はムリヤリ小説仕立てにしてる違和感がちょっとありますよね。
    ビリーミリガンですか。多重人格障害の人の話ですね。
    紹介ありがとうございます。読んでみます。

コメントは停止中です。