すばらしきホンダ車たち〜NSX〜

 NSXを間近で初めて見たのは、たしか高校3年の頃、ホンダ学園へ学校見学に行ったときだったと思う。

 アソコは学校見学や保護者参観、企業見学会など部外者が来校する場合、ガレージの奥にしまってあるNSXやNRなどプレミア車両を玄関に飾るというコソクな手を使う。しかし当時はそんなこと知らないから、「おお〜ここに入学したら、NSXが実習車か〜」とまんまと騙された。そしてすぐに入学手続きをした。

 まあ、まんざらウソではなかった。さすがに学生達にNSXを分解させたりということはなかったが、車庫入れの実習(お客さんのクルマを運転する際に必要な立派な技術)のときに乗せてくれた。ハッキリ言ってあのクルマは前に走ることだけを考えて作られている。

 ボディのほとんどがアルミ、足廻りもアルミ、V6エンジンをリヤにマウントするなど、ホンダのメカニックを目指す学生達にとっては憧れのクルマであった。僕もその例に漏れず、「いつかは絶対乗ってやる」と思ったもんだ。NSXはベルノ店の専売なので就職の第一希望はベルノが多かったのは言うまでもない。

 しかし当時はそんな「特殊な」クルマを整備するだけの技術と設備が全てのベルノ店にはなかった。オールアルミボディは普通のカーリフトで持ち上げると歪んでしまうようなデリケートなものだったし、ホンダの生産ラインの従業員でも熟練した者しかNSXの生産に配属されることがなかったので、整備するメカニックもNSX専用の人が必要。だから大きいベルノ店ぐらいにしかNSX専用のリフトとNSX専用のメカニックがいなかった。

 そういうベルノ店は競争率が高い。僕は東京の大きなベルノ店に履歴書を送っていたが、何も連絡がなかったということは書類審査で落とされたのだと思う。そんなこんなでプリモ店に就職、今に至っている。ベルノに就職しなかったことによってNSXと僕との隔たりは大きく広がってしまい、「憧れのクルマ」から「憧れるだけのクルマ」になってしまった。

 完全受注生産、内外装色はオーダーメイド、フロアマットには自分の名前を刺繍してくれるという、まさに「プレミアムなクルマ」。メーカーのフラッグシップモデルとしてこういうクルマは必要だと思う。そしてホンダを愛する者として、やっぱりこのクルマに一度は乗らないといけないと思う。いつになるかわからないけど。