サービス

 「灯油を車内にこぼしてしまった」というお客さんが来た。

 以前にガムを足にひっつけたミニチュアダックスが車内で暴れまわって、シートやフロアがガムまみれになったというクルマもあった。いろんな修理があるものだ。

 内張りを外したりシートを外したりして大変な作業になる。灯油の匂いなんかどうやっても完全に取れることはない。しかもこういう作業は工賃が設定されているわけではないので請求が難しい。頑張った割には見返りが少ない、あまりヤル気の出ない作業である。

 こういうときのヤル気の出るか出ないかは、正直言ってそのお客さんの態度に影響される。サービス業たるもの、お客さんによってサービスの質をコロコロ変えてはいけないのは当然だ。しかし人間対人間のコミュニケーションである以上、サービスを受ける側にも提供する側にも「気持ちよく」なる為の丁寧な言葉遣いや態度はとても大切だと思う。

 このクルマを持ってきた中年のおばちゃんは、非常に腰が低くて言葉遣いにも好感が持てた。灯油もある程度自分で掃除したのであろう、車内はきれいに整理整頓されており、匂いを除けばほとんど新車のようになっていた。

 「お前灯油こぼしたやろ〜。どんくさいの〜」とダンナに言われ、「お母さんのクルマなんかくさ〜い」と子供に言われ、「あたしのクルマ灯油くさいから・・・」と、友達とのドライブにも行けないのだ。・・・いや、本当のトコロは知る由もないが、そういうお客さんの態度とクルマを見ればそこまで想像が膨らむものだ。 こんなお客さんだと「よっしゃ、ファブリーズでも何でもいっちょやったるか!」になる。そうではないお客さんにはここまでのサービスを提供する気になれない。

 僕らも当然サービスを受ける側になることがある。やはりいいサービスを提供してもらいたいと思うのは僕だけではない。そう思ったら、いいサービスを受けることができるような、いいお客さんにならないといけない。