昨日はパソコンをさわるヒマがないぐらいに忙しかった。こんな日は久しぶりだ。そんな中、「クルマが止まった」とお客さんから電話があった。
この場合、一口に「クルマが止まった」と言われても、どう止まったのかが非常に重要になってくる。現地へ引き取りに行くとなると、必要な工具の種類を予測して持っていくことができるからだ。だから僕は、「お客さんのクルマが止まったらしいから取りに行ってきて」とだけ頼まれても、ハッキリ言って行く気がしない。
ウチの社員のみなさんは、僕のその辺のワガママを理解してもらえてるみたいで、ある程度電話口でお客さんに問診してくれるのだが、残念ながらこれがうまくいったタメシがない。
今回の問診の結果は、「走っている途中でガラガラと変な音がして、エンジンが止まった」らしい。エンジンがガラガラと音を立てて止まってしまうなんてことは、オイルメンテの不良でエンジンが焼き付いてしまったんじゃないだろうか。牽引ロープ以外のものは必要ないだろうとタカをくくり出発した。
しかし現地に着くと、お客さんはエンジンのかかったそのクルマの中で暖房とCDをかけながらくつろいでいた。しかも1週間前に納めたばかりの新車のFITである。ハナシをよく聞くと、どうやらサイドブレーキを引いたまま走行してしまったようで、「変な音」というのはブレーキの引きずるゴリゴリ音、そして「エンジンが止まった」のではなく「怖くなってクルマを停めた」ということだった。
クルマが道端で止まる(停まる)なんてことはお客さんにしたらあってはならないことで、興奮して当店に電話をかけてくるわけで、その時の状況をうまく我々に伝えられないことはよくある。しかしそれは予測できることだ。我々はそういうイマイチ何を言っているのかわからないお客さんの声を、上手に翻訳して対処しないといけない。さらにそれを受け付けた者から作業をする者まで的確に伝えないと、今回のような見当違いの工具(道具)を持って行ってしまい、時にはそのまま見当違いの作業をしてしまうこともありえる。
「伝言ゲーム」というものがゲームとして成立しているのは、聞いたことを正しく伝えることができないという記憶の曖昧さと、言葉や情報を自分の中で勝手にわかりやすいように解釈してしまうという人間のクセを利用しているからだ。もし「ホンダ販売店対抗伝言ゲーム大会」が開催されたら、当店は確実に予選落ちしているわけで、そんな状態ではお客さんに信頼される店には程遠い。
「人間のクセだから」と笑っていてはいけない。そのあたり十分気を付けないと、白のクルマを注文されたのに黒を納車してしまうことにもなりかねない。