鼻の記憶

 先週淡路島を走っている時に木馬店長が「なんか沖縄に似てるなあ」と言った。確かに海岸線は沖縄の雰囲気があるが、沖縄とは確実に異なる点が一つ。匂いである。

 沖縄は淡路島の魚臭いというか磯臭いというかそんな田舎の安っぽい匂いはしない。沖縄の匂いはもっとハワイに近い。ハワイの匂いがどんな匂いかと聞かれると説明しにくいが確かにある。

 人間はいろんな記憶を脳の中にメモリーしているわけだが、それらの記憶を引っぱり出すのは五感だ。見た目、感触、味、音、そして匂い。私はこの「匂い」が記憶を引っぱり出すチカラが一番強いんじゃないだろうかと思う。

 今日自転車で通勤していると、コテコテに改造した古いスターレットが私をスゴイ勢いで追い越して行った。その後、排気ガスの匂いがした。キャブレター、レースガス、カストロール、そして触媒キャンセル。もう、車検に通らないどころか公害以外のなんでもない排気ガスの匂いだった。私はカラダに悪いに決まっているこの匂いが結構好きだ。

 サーキットに行くとこの匂いがする。レーシングエンジンの高温、高圧、高回転で燃やされたレースガスが放つ匂い。まさしく今朝のスターレットと同じ匂いだ。そして私が昔乗っていたミニの匂いにも良く似ている。

 あのクルマはよかったなあ。あの頃の仕事はしんどかったなあ。あの頃の彼女は何をしているのかなあ。

 余談ではあるが、私の友人が風俗店に行きオネーチャンとイチャイチャしていた。彼は「このオネーチャンは昔のオンナと同じシャンプーの匂いがするなあ」と思っていたそうだ。よくよくそのオネーチャンを見るとなんと本当に昔の彼女だったそうだ。びっくりして、そしてその後冷静になって「カネ返せ〜」とゴネたら、恐い人たちに連れて行かれたらしい。本当にあった恐い話だ。そしてあくまで私ではなく友人の話である。