ある人のこと

 お客さん相手の仕事をしているといろんな人に接するので、ここに書くネタには事欠かない。今日もあるお客さんの事を書こうと思う。その人は私のブログのファンなので、これを読んでモニターに向かって赤面していると思われる。

 そのお客さんとは、私がメカニックになって少ししたぐらいからなので、もう10年近くのお付き合いになる。奥さんが、当時乗っていたガタガタのTODAYの修理を依頼されたのがきっかけである。その後ライフに乗り換えてもらい、今では家族ぐるみで仲良くしてもらっている。

 転勤になったり、職場を変えたり、職種を変えたりしても、連絡して来てくれて私を追っかけて来てくれるのである。私はお客さんという域を越えて、(誠に勝手ながら)すでに友達と思っている。

 そして昨日、旦那さんが仕事中に一人で来てくれた。

 旦那さんは私と同じで、「クルマ乗り換えたい病」にかかっている。しかしこれまた私と同じく、「クルマなんか買わへんで病」にかかっている奥さんが目を光らせているのである。

 旦那さんは当店に来るたびに、展示車やカタログを見て溜め息をつく。
 「はぁぁ〜。クルマ欲しいな〜」
 私もそれを聞いて、
 「欲しいですよね〜」
 そして2人そろって、
 「でも嫁ハンがなあ・・・」となるのだ。
 「Mさん、ウチの嫁ハン説得してくださいよ〜」と言われる。しかし自分の嫁を説得できないでいる私が、人の嫁さんを説得なんてできるだろうか。

 正直言って、このお客さんにはクルマを買っていただきたい。給料に「新車紹介手当」がつくからというわけではない。特別ボーナスが出るからというわけでもない。そんなモノ、ウチの会社には無い。でも昔から私を慕ってくれている人が買ってくれると、単純にうれしいじゃないか。自分の技術や人柄が他人に認められ、それがお客さんを引き留めることになっていると思うと、ウン。やっぱうれしい。

 ウチの嫁と同じでここの奥さんも、クルマのメカニズムやスペック、高度な技術で製造された過程などを説明しても意味が無いと思われる。私はメカニックなので、その辺から説明してしまうクセがあった。だから今回は違うやり方で説得してみる。うまくいったら自分の嫁にも試してみようと思う。

 「奥さ〜ん。最近キレイになりなしたよね〜。イヤホント、いつまでも若々しいですよ〜。その若さをさらに長く保つ秘訣は、やはり新車だと思うんですよね〜。キレイな人ほどキレイなクルマに乗っているもんですよ〜。今購入していただいたら、速水もこみちのオリジナルグッズがついてきますよ〜。福山雅治もありますよ〜。シャラポア特製付けチクビなんてのも・・・」

 私は営業マンには向いていない。