悲しきMTB

 また自転車のハナシ。

 最近MTBに乗る機会が激減した。普段はほとんど通勤で乗るので、自宅にはロード1台だけがあり、MTBは実家でホコリをかぶっている。まあ、移動に使う道路の全ては舗装されたものしかないので必然とも言える。舗装路ではどう考えてもロードの方が速い。いくらMTBに細いタイヤをつけようと、いくら軽量化しようと、舗装路を走るのにはロードが一番適している。

 MTBに乗る機会が無いわけではない。回転木馬はしょっちゅうMTBイベントを計画してくれるし、自宅から少し足を伸ばせば、ダート路なんていくらでもある。しかしなんか乗る気が起こらないのだ。

 私はきっと、スピードに魅せられたのだろう。
 「自転車に乗っていて一番楽しい時は?」と質問されると、
 「スピードを出している時」と答えると思う。

 下り坂を自転車ではありえない程のスピードで走っている時のあの緊張感がたまらない。MTBのダウンヒルとは少し違う。苦しい坂を自分の足で上り、貯めに貯めた位置エネルギーという貯金を一気に使い果たすあの快感は何物にも換え難い。

 昨日仕事の帰りに、阪奈道路の長い下り坂を、トラックの後ろでドラフティングしながら80km/h近くを記録した時には思わず歓喜の声が出た。これが「ライダーズ・ハイ」というものなのだろうか。

 MTBで山の中に入り、きれいな空気を吸い、「やっぱり自然はいいね」なんて話をするのもすばらしいことだ。だけど私は、ディーゼル煙にまみれた都会の汚い空気を大きく吸い込み、その中から数少ない酸素分子を取り込んで、スピードに変換することに楽しみを見出してしまった。

 そんな自転車の楽しみ方をしているヤツもいるのだ。