大人として

 昨日仕事中に「ガシャン!」いう音がした。音の方を見ると、隣のファミレスの駐車場に停めようとしたクルマが、勢い余ってバックのままフェンスに激突していた。当店に来店されたことがある人は良くおわかりかと思うが、隣のファミレスの駐車場とウチの店の駐車場は、緑色の網のフェンスのみで区切られており、タマに運転のヘタな人が車輪止めを乗り越えてフェンスに当たるということがある。

 しかし、昨日のぶつかり方は今まで私が見た中でも1・2位を争うほど強烈で、フェンスは45度ぐらい傾き、土台のブロックは根元からなぎ倒され、新装オープンした時に新しくしたウチの店の看板にまで被害が及んでいる。私はその様子を「あ〜あ」ってなカンジで見ていた。

 アウディから下りてきた老夫婦は自分のクルマのバンパーのキズを見てからフェンスを見た。そしてウチの看板が凹んでいるのも確認していた。そしてその一部始終を見ている私や同僚とも目が合った。それからまたクルマに乗り、駐車する場所を変えた。そしてまたバンパーのキズをまじまじと見ていた。

 それからその夫婦は二手に分かれて、一人はファミレスに、一人はウチに、お詫びでもしに来るのかと思っていた。それとも警察か保険会社に連絡するべく、携帯電話を手に取るのかと思っていた。

 ところが!そのバカ夫婦(これ以降はこう呼ぶ)は何もしようとせず、何食わぬ顔で誰かを待っている様子である。やがて待ち人が現れ、何事も無かったようにファミレスへ入って行こうとするのだ。その「何事も無かった」っぷりにハラが立って私はバカ夫婦を呼び止めた。

 「ちょっと待てコラー!」

 最近カゼ気味でしんどいのだ。
 しかもいつになく仕事は忙しいのだ。
 しかしそんな時に限って、しょうもないコトに首を突っ込まないといけないハメになるんだ。

 私の声に「ビクッ」と反応したバカ夫婦はこっちを見て、つかつかと近寄ってくる私に向かって「何の用ですか?」的なバカ面をしている。

 その後の私とバカ夫婦の言葉のやり取りはご想像に任せる。私もホンダのツナギを着ている時間である。第一声を除けば、後はホンダの一員、いや、社会人として正しい言葉遣いと適切な指示をしたつもりだ。警察に連絡させ、保険会社に連絡をさせ、ファミレスの店長を呼んで来させ、そしてウチのショールームまで連れて来て謝らせた。

 しかしここまで指図しないと出来ないことだろうか。似合ってるかどうかはさて置いてコマシなスーツを来ているロマンスグレーのおっさんと、これまた似合ってるかどうかはさて置き派手な化粧と洋服を着ているおばはん。クルマは安いなりにもアウディ。地位も名声もある程度のものは持っていると思われるいいオトナが、他人の物を明らかに自分のミスで壊したくせに、謝ろうともせずその場を立ち去ろうとしていたのだ。

 会社や学校や日常生活の中で、こんなバカなオトナにかわいそうな若者達は評価されているのだ。そう思うとやりきれない。「黙ってたらわからんやろ」って、そんなことではオトナとして示しがつかない。

 正直言って私も他人の物を壊したり、駄菓子を万引きしたりして黙ってその場から離れたことがある。しかし子供が出来てから、どうしてもそれが許せなくなってきた。可能ならば過去に戻って自分のしたことを悔い改めたいとまで思う。

 なぜなら自分の子供には、こんな「バカなオトナ」になって欲しくないからだ。

 このバカ夫婦のおかげで、「こいつらの息子もバカなんだろうな」とか「こいつらの勤める会社はバカばっかりなんだろうな」とか、さらには「アウディ乗ってるヤツはみんなバカなんだろうな」となってしまうのだ。

 一度躾ければ、部屋のそこらじゅうでウンコしなくなる。「良い事」と「悪い事」の区別は犬や猫でもできること。人間、しかもオトナが「良い事」と「悪い事」の区別が出来なくてどうするんだ。私は正しいことをきちんと区別できるオトナを目指しているし、そんなオトナをできるだけたくさん育てたい。

 オトナの皆さん、子供の未来の為にがんばりましょう!