オーバーヒート

 久しぶりに仕事のハナシでも。

 今日、仕事を終えて帰ろうとしているまさにその時に、お客さんから「オーバーヒートした」という電話が入った。どんなパターンでもそうだけど、「こんな時に限って」というタイミングを狙ったかのようにトラブルは起こるものである。

 子供が日曜日に限って熱を出したり。

 空気入れを持っていない時に限ってパンクしたり。

 昼にカレーを食べた日に限って晩もカレーだったり。

 風俗に行った日に限ってYES/NO枕が「YES」を向いていたり(ウチのことではありませんよー)。

 まあいずれにせよ予想外の展開なわけで、必要以上にバタバタしたりアタフタしたり。さらに加えて「イライラ」するのが人間である。

 今日も結構イライラした。「冷却水ぐらい日頃から点検しとけよ!」「明日でええやんけ!」「なんでこの時間やねん!」と、ここでしか言えないようなことを一通り(アタマの中で)毒付き、プリプリしながら2リッターのペットボトル3本に水を入れ、先輩メカニックと2人で出かけた。

 普段は仲の良い先輩なので良くしゃべるのだが、今回は2人ともイライラしているので車内ではムッス〜としていて何もしゃべらなかった。やがてお客さんの家に到着しクルマを確認すると、やはりどうしてもこの場で修理とはいかない症状である。

 とりあえずラジエターのフタを開け(ホントは熱い時に開けたらダメですよ〜。良い子はマネしないように)、持って来た水を入れ(2リッターも入った)、エンジンをかけてダマしダマし走行し帰社。乗って行ったクルマは代車としてレンタルすることになったので、帰りもまた先輩と2人。

 走り出して数分もしないうちにまた水温が上がって来た。停車して水を足そうかとも思ったが、めんどくさかったので(良い子はマネしないように!)ヒーターを全開に。そしたら水温が少し下がったのでそのまま走行。

 しかし、台風のおかげで涼しくなったとはいえまだ8月。このクソ暑い最中にヒーターを全開にしているバカは我々2人以外に考えられない。もちろんマドも全開にしていたのだが、突然先輩がマドを閉めた。「何すんねん」と先輩を見ると、先輩はニヤリとして

 「ガマン大会や!」と言った。

 「よっしゃぁ!」とすぐに乗る私。

 さっきまでムッスリとしていて何もしゃべらなかった2人は、急に子供のようにハシャギだした。

 大人の男2人が、マドを閉め切ってヒーターを全開にして、汗だくになりながらガマン大会をしている。

 しかもオーバーヒートしているお客さんのクルマで。

 良い子はマネしないように。