自転車で通勤する際、帰りは結構自分なりに追い込み、強度を上げて漕ぐのだけど、行きはその後の業務の事も考えて(デスクワークではないので)そんなにはトバさないようにしている。それでも平坦路を若干の追い風に乗りながら30km/h程で走る。
そんな感じで気持ち良く走っていると、時たま、いきなり後方から見知らぬローディーに「右から抜きます!」とか言われ、シャァァーっと抜かされて行く事がある。
微妙な心境である。
私は「けっこう乗れてるやん」などと少々ウキウキしながら走っているのだ。ママチャリで通学している女子高生は私が風の様に走って行く姿を見て、きっと「かっこいい〜」と思っているハズなのだ。それをいともあっさりと「シャァァーー」ってな感じで抜かされると、何だか自分がチンタラ走っているような気にさせられる。
いや、抜き返せないスピードではない。むしろ信号待ちなどで簡単に追い付いてしまうのである。しかしここで抜き返してしまうと、見知らぬ相手だとはいえ失礼に当たらないだろうか。
例えば、少しスピードを上げて抜き返したとする。が、それはつまりその相手に対して「バトル上等!」という意思表示に取られてしまわないだろうか。また再び抜き返されないようにスピードを上げ続けなければいけなくなるのではないだろうか。
私はこの後の仕事の事を考えてのこのスピードなのである。別に今は練習でも何でもないのである。タダの通勤なのである。だから抜き返す必要はコレっぽっちも無いのである。
だったらそのまま、抜かされたままでいいのだけど、それも何だか腑に落ちない。もし私を抜かしたそのローディーが、この「M君の日記」を毎日欠かさず読んでいる私のファンだったとしたら、それはある意味「M君」のイメージを崩してしまうことにはならないだろうか。
「なんや。意外と遅いやんけ。あれだけ最速だのなんだの書いといて、結局はブロガーなんて多重人格なヤツの自己満足オナニー野郎ばっかりやんけ」となってしまわないだろうか。ブロガー代表として、それは絶対に避けなければいけない。
こういう場合、どうすればいいんだろうか。
逆の立場で考えてみる。
きっと相手は相当な度胸を持って私を抜かしたのだと思う。「イイ気になって抜かしたけど、もしかしたら『バトル上等!』と取られたかもしれない。もしかしたら抜き返されるかもしれない。恐い!なんだかとっても恐い!確か赤のケルビムだった。あれはきっとM君!ああ〜。オレはエライことをしてしまった!今から謝って済むだろうか。イヤ、絶対ムリだ。きっと『清滝で勝負じゃ〜!』とか言われるに違いない。もう逃げるしかない!オレの出しうる最高のパワーを持って地の果てまで逃げ続けてやる〜(涙)」と思っていることだろう。
そんなことをニヤニヤ妄想しながら、間違いなく確実に小さく遠くなってゆく見知らぬローディーの背中を見つめるのである・・・。