傷の記憶

 私のケルビム号は子供が生まれる2〜3日前に納車されたから、もうすでに1年と2ヶ月乗ったことになる。

 たった1年と言えばそれまでだが、けっこういろんなところに走りに行った。この1年、走行距離や乗車時間はウチのクルマより長いんじゃないだろうか。

 1年も乗っているとあちこちに傷が付いた。担いだ時にカバンで付けた左側バックステーの傷。チェーンが外れた時に付いた右側チェーンステーの傷。バイクタワーに掛けた時についたトップチューブの傷・・・。「M君の自転車はキレイだね」って言ってもらえることがあるけど、よく見るとそのほかにも傷はたくさんあって、決してキレイとは言い難い。

 でもまあ、フレームを塗り替えるほどのことでもないし、傷がついているパーツを交換するほどのことでもないのでそのままにしている。特に乗車にあたって直接不具合につながることもない。

 私にとっては傷の一つ一つが思い出のマークである。私とケルビム号の歴史(まだたった1年だけど)の中でついたそのマークを、わざわざお金をかけて消すこともないかなって思う。

 大切にしているクルマなのに、目立つところに傷が付いているのをそのままにしているオーナーをよく見かける。「それぐらいの傷なんて1万円ぐらいで直せるんだから・・・」って思うこともある。

 だけど「自分だけの印」と思ってそのままにしているオーナーもいるのだろう。とやかく言わずに優しい目で見てあげることにしよう。

 心の傷も同じだ。「無傷」ってのも何だか味気なさそうで・・・。