1歳半健診

 ウチの天才息子を1歳半健診に連れて行った。噂によるとこの健診では、言葉の数や物の認識テストが行われるということなので、数日前からクルマの絵本を使って「ショベルカー」「ブルドーザー」「パトカー」「消防車」「はしご消防車」「コンクリートミキサー車」を覚えさせ、完璧なまでの解答率を得ることに成功した。「ダンプカー」に一抹の不安を残すが。

 会場となる市の保険センターでは、1年半、手塩にかけて育てた我が子の自慢にやって来た親達でごった返している。まるで仔牛の品評会のようでもあり、滑稽な感じさえした。

 さていよいよ我が息子の番がやって来た。日頃の特訓の成果を試す時である。

 しかし、実際の診断テストは私が想像していたものでは全くなく、2センチ角ぐらいの積み木を4つ手渡され「これを積み上げて下さい」というものだった。こんな練習全くやっていない!明らかに「ヤマのはり間違い」である。ヨソの子がひょいひょいと積み上げて行くのに対して、我が天才息子は一つだけ積み上げ、それがキッチリと積み上がっていない出来映えに納得がいかないらしく、ピシッとなるまで小さな人さし指で必死に揃えていた。「几帳面なお子さんですね」と診断されてしまった。

 失意のまま次のテストへ。

 一枚の紙に「いぬ」「くつ」「くるま」「さかな」「ジュース」「でんしゃ」が描かれており、先生に「さかなはどれかな?」と聞かれて指を差せればオッケーというヤツだ。こんなテストも全くの想定外である。ところがアタフタしている私と嫁をよそに、息子は天才っぷりを如何なく発揮し、すいすいと答えていた。さすが!と思った矢先、「さかな」で躓いていた。その絵をみるとイヤにリアルに描かれた鯛である。息子は鯛なんかまるごと見たことなんて無い。いくら天才でもこれはムリやな・・・、と思ったその瞬間、横で見ていた嫁が、

 「この子切り身しか見たことないんです!」

と言った。ワケのわからんフォローである。嫁の必死の形相でのアピールが良かったのか悪かったのか、無事に「異常無し」にマルをつけてもらった。

 なんかほっとして周りを見渡すと、ウチの息子よりデキの悪い子がたくさんいる。「ジュース!」と言われて迷わず「くるま」を指差し、本気モードでお尻を叩かれている子もいたし、積み木をそこら中にぶちまけている子もいた。

 総評・・・1歳半ぐらいでは何も変わらない。みんな明るい未来を内に秘めた世界の宝である。