なんでそんなにハラの立つことがあるねん、というぐらい嫁に対してキレて、大きな声で怒鳴ったりすることがある。そしてその声にびっくりした子供が泣き出す。そのやかましさにさらにハラが立ってくる。こうなってしまう原因の一つはもちろん私にもあるのだけれど、私はこのシチュエーションが大嫌いだ。
私にはオトンがいない。中学の時に死んだ。オトンは酒を呑んでは暴れて、オカンを叩いたりフスマを破ったりしていた。そんなオトンが大嫌いだったので、そうは絶対になりたくないのだけれど、なんか自分がそうなっていってしまいそうでとても恐い。なんだか物凄いチカラでそうなるように仕向けられているかのようでとても恐い。
「オトンのようにはなりたくない」と常日頃から意識している。私の反面教師であり、とりあえずオトンのようにならなければ幸せな家庭が築けると信じている。そこにどんな理由があったのかは子供心にはわからなかったけれど、オカンを叩いてフスマを破って大きな声で怒鳴ったりしているヤツが正しいわけがない。
だけど今、自分がそうなりつつある。いまのところ嫁に対して殴ったりフスマを破ったり酒を呑んで暴れたりすることはないが、もしかしたら時間の問題かもしれない。オトンに近付いていってるという苛立ちがさらにイライラを加速させる。もう全然止められない。このままでは幸せな家庭など築けるはずもない。遺伝とはこういうものなのだろうか。本人がどれだけ意識して頑張っても、見えないチカラでそうなるように仕向けられるのだろうか。
今日も嫁にキレてしまった。原因はいつも一緒。片付けが出来ていないことについてだ。いつも一緒である。そのことにしかキレたことがないのに、嫁は整理整頓が一向に上手にならない。なんだかこちらが被害妄想みたいになってくる。もうどうしようもない怒りが込み上げてきて怒鳴る・・・。
オトンもこうだったのだろうか。そこでグッと我慢することは出来なかったのだろうか。「仕事でもイライラしてんのになんで家でもイライラせなアカンねん!」とオトンは言った。今日、私も全く意識せずに同じことを言った。恐い。ものすごく恐い。ただ幸せになりたいだけなのに。