オキナワレポート その1

 300人の大集団は辺戸岬からの海岸線(国道58号線)を強い追い風に乗って60km/h近いスピードで南下していた。普通ならビビってしまう速度だが、前にはイノウエさん、後ろにはナカハラくん、そして隣にはローラーアニキだっている。とても心強い。独りではこんな速度の大集団には入れなかっただろうし、そもそも自分独りの力ではスタートラインにさえ立てなかっただろうと思う。

 ここでは書ききれないほど大勢の人の力を借りて、今ここで、こんな速度で走っているのかと思うと、感謝の気持ちとスリル感とが相まって、思わず「楽しいなあ!」と叫んでしまった。そしたらイノウエさんも「楽しいなあ!」って。ホントに楽しかった。

 脚がメチャクチャ軽い。息も全然乱れてない。前のヤツが少々ふらついたって、仮に落車したってラクショーで避けれる自信があった。乗れてる!人馬一体とはこのことや!ものすごい調子がエエ!このまま空だって飛べそうなイキオイや!

 やがて集団は大きく左へカーブしていよいよ上りへ。距離約7.7km、高度差約330m。我々が走っている市民85kmクラスでは最初の難関である。木馬メンバー3人は順調だった。前日試走した時にローラーアニキに教えてもらった「最初の斜度が緩い所でトバし過ぎたら後が続かない」との助言を守り、3人のペースを合わせて黙々と上った。

 ドキドキした。これまでこのオキナワを想定して一緒に練習してきた甲斐があったと思った。一緒に上れてる!一緒のペースで上れてる!よっしゃイク是!とフロントをアウターからインナーに落としたその瞬間・・・・・!

 チェーン外れた・・・・・。

 普段はこんなミスなんてしないのに、どうやら舞い上がっていたようだ。走りながらなんとかリカバリーしようとクランクをカラカラ回すがなかなかチェーンがかかってくれない。増してきた斜度とは反対に、落ちてきた速度は自転車を自立させられなくなってしまい、ついに足を着いてクランクを手で回してチェーンをかけた。

 パニックになりかけたが、後ろから来たローラーアニキに「マエくん落ち着いて!」と声をかけられハッとした。そうやん。まだ20kmも走ってへんやん。イノウエさんとナカハラくんは先に行ってしまったけど追い付く追い付く。まだまだ先は長いんや。

 とはいえ不安は拭いきれない。さっきまで一緒に走っていた仲間がいなくなった。チェーンが外れたときは自分が最後尾を走っていたから、2人は私が遅れた理由をわかっていないだろう。余計な不安を与えてはいけない。早く追いつくのが先決か、とりあえずマイペースで息を整えるのが先決か。しかしこの先、ナカハラくんとはゴールの名護市民会館まで会うことはなかった。

 つづく。



 ↑ 前日の試走にて。国道58号線。北に向かって走っている写真なので向かい風がすごい。ちなみに市民85kmのコースマップはこちら