テクニカルセンター

 大阪市城東区に、ホンダのテクニカルセンターがある。

 ここには本田技研の研究所クラスの講師が何人もいて、近畿のホンダ販売店に勤めるサービスマンの研修や資格試験を行っている。私もこのブログに「明日と明後日は研修」みたいなことをよく書くけど、まさにここで研修をする。

 研修の他には「難修理の診断」というのをやっており、様々な最新鋭の診断機器が常時取り揃えられ、近畿一円の販売店から「異音がする」とか「エンジンが止まる」とかいうヤヤコシイ症状を抱えたクルマが集まって来ている。

 そんな何をやっても何を交換しても直らないような、いわば「ええかげんにせーよ廃車にしてまうぞオラ」というクルマをテクニカルセンターに持ち込んで来るサービスマンの顔はみんな疲れ果てている。

 そりゃそうだ。

 お客さんや担当営業マンからは「いつ直るの?」と散々急かされるのだ。それがわかってたらもう直ってるっちゅーねん!わからんから悩んでるねんやんけ!と心の中で叫び、「すんませんまだちょっとかかりそうです〜」なんて言わなければいけないのである。プライドもズタズタだ。そんな数々のストレスやしがらみをかいくぐって来たサービスマンにとって、このテクニカルセンターは最後の砦であり、ここで直らなければそれこそ廃車である。

 皆さんここで耳をカッポジって良く聞いて頂きたい。

「私はテクニカルセンターに難修理を持ち込んだことは無い」のである。

 決して「難修理は先輩にマル投げしてる」ということでは無い。

「どんな難修理でも自力で直している」ということだ(拍手)!

 つまり私の修理技術はテクニカルセンター並なワケで、私にとってテクニカルセンターなんぞ資格をさっさと頂ければ無用の長物であり、お前らの高額な給料はオレに回さんかいっちゅうハナシである。


 ・・・・・。


 だけど、私の輝かしい経歴にキズが付く時がやって来た。ついに明日、どうしても直らないステップワゴンを持ち込まないといけないのだ。

 近畿一円から集まった疲れ果てたサービスマンに混じって、私もそんな顔をしながらアタマの堅いメーカーの人間と一緒に診断をしないといけないのだ。

 ああイヤだ。誰か代わってくれーー!!