「夜に口笛を吹くとヘビが出る」とか、「朝に見るクモを殺すと良くない」とか、「奈良公園でデートをすると必ず別れる」とか、「雛人形を早く片付けないと嫁に行き遅れる」とか、この世の中には様々な迷信がある。
私達は何かしらの迷信を親や親戚から聞かされ、友人といろんな「迷信情報」のやり取りをし、そして自分の子供に受け継がせたりしている。
そんな数ある迷信の中で、私が個人的に気になってるのが「親の死に目に会えない系」のモノである。
地域や年代によって違うだろうが、私の地域・年代は「夜にツメを切ると親の死に目に遭えない」というものだった。
母親だったかおばさんだったか忘れてしまったが、私は子供の頃それを聞いて深く考え込んだことがある。
「自分の親が死ぬその瞬間を見届けることがそんなに大切だろうか」
私は中学生の時に父親を亡くしたが死に目には遭っていない。ていうか遭わなくて良かったと思った。今まさに人が死ぬその瞬間を「見たい」と思うヤツがいるのだろうか。
「死ぬ」んやで。その後は絶対に目を覚ますことは無いし、死後硬直とか始まって、斎場で焼かれてホネになるんやで。
さっきまで生きてて、息とかしてて、心電図とかもピコピコしてる人が、「死ぬ」んやで。
「こらこら夜にツメ切ったら親の死に目に遭われへんでー」
なんて言われてもピンと来るものが全く無かった。だから私は夜中だろうとなんだろうとツメを切りまくった。「親の死に目?そんなもんどーでもええわい」と、切りまくった。
だけど自分が親になってみて少し考えが変わった。
さっきツメを切った。
私はオカンを看取ってやることができるだろうか。