人馬一体

 何年か前、MTBに一生懸命乗っていた頃、常に「人馬一体とはなんぞや」と考えていた。SDA王滝での好記録を目指していたので、登りだけでなく下りの速さも色々と考えながら、足しげくダート工業だの山城だのに通ったものである。
 
 私が乗っていたMTBはアルミハードテールで26インチ、フロントサスもロックアウト機構なんて付いていなかったから、ちょっと大きな石ころやちょっと深い轍などがあると、バイクの走行の補佐をするために、ブレーキやハンドルの操作をあれやこれやと忙しく動かしまくっていた。
 
 しかし練習も後半、ブレーキを握る握力もハンドルを操作する腕力も衰えてきて、それでも容赦なく現れる障害物に辟易しながら、「ええ~い!いってしまえ!」と半ば落車覚悟で突っ込んでいくと、意外とすんなりクリアできるときがあった。
 
 その瞬間に、人馬一体とはこのことかな?と気が付いた次第である。
 
 バイクは元々、人間がいらんことをしなくてもそこそこの走破性を持っているもので、コースを難しくしているのは意外と人間のせいだったりするのである。少々の石ころや轍なんか、結構バイクの性能に任せておけば軽くクリアできるものが多かったりして、それでもクリアできないところはようやく人間の出番、ぐらいに思っていたほうが良い。その「人間の出番」のポイントを上手に見極められると速く走らせることができると思う。
 
 「バイク任せ」と「人間の出番」のポイントを行ったり来たりしているときこそが、「人馬一体」ではないだろうか。もちろんロードバイクにも人馬一体ポイントがあるけれど、自分の場合は結構速度の高い域だったり下りのワインディングであったりするので、ヒルクライム中でもそれを感じることができるように、もうすこしカラダを絞っていきたい。