以前、夕方の情報番組で湊かなえのロングインタビューがありたまたま観ていたのだけど、なんだか好感の持てるおばさん(失礼w)だったので読んでみた。たしかそのインタビューも夜行観覧車ドラマ化にあたってのものだったと思う。
舞台はとある高級住宅街で、ある一軒の家庭で起こる殺人事件。だけどその犯人が誰なのかとか、何故殺したのかということは二の次で、この物語は家族の絆とか愛とかがテーマ。大きく分けて二軒の家庭の視点から描かれていて、さらにその家族それぞれの視点や感情から、ひとつの物事が説明されていく。
時間軸は間違いなく1本なのだが、それを様々なキャラクターの目線から書かれているので、ひとつの出来事がとても立体的になっている。どのキャラクターがどんな心境なのかを読者が理解しているのに対して、作中の登場人物たちは他人の気持ちが理解できずに思い悩む。そこがまた面白い。
近所付き合い、受験、反抗期、家庭内暴力…。自分のことに置き換えると怖くなってしまうことばかりだが、実は身近に接近している問題ではないかと気付かされるとき、この作中の家族たちが他人には思えなくなって、一気に感情移入、一気に読んでしまった。
登場人物の誰もが何かしらの問題を持っていて、「こいつの言ってることが正解!」ってのがいない。普通のミステリーなら、探偵役とか刑事役が正解を述べるのだが、これは誰が正解というわけではない。だからなんだかスカッとするラストにはならないのかなあと思っていたら、なかなか綺麗にまとめられていて、読後の気持ちよさみたいなのがあった。
湊かなえ作品はこれが初めてだったけど、個人的には宮部みゆきより好きかな。まあ比べるものでもないんだろうけど。