再読。つい最近読んだ気もするし、何年も前に読んだ気もする。子供のスイミング引率の間の暇つぶしに何かいい本はないかなと本棚を漁ったら出てきた。どちらにせよ内容の記憶が無いので、愛用のブックカバーに入れて持ち歩くことに。
ストーリーが思い出せなかったり、感想文の記録が残っていない本は大抵の場合、面白くなかったか読了せずに放置したままになったことがほとんどで、つまりはこの本もそういうことなのだろうと期待せずに読み始めたが、なぜこの本が印象に残らなかったのか、今になって不思議に思う。それぐらい面白くて一気に読んだ。
奥さんと幼い娘との3人暮らし。幸せな毎日なのについ出来心から浮気をしてしまう。それがやがて不倫へと発展し、奥さんとの離婚まで考えるようになる。ところがその不倫相手は実は殺人事件の容疑者だった…という内容。
殺人事件の謎解きがメインとなるような物語ではない。登場人物も少なく、物語の舞台もそう遠くへ飛躍していくようなものではない。とにかく主人公の渡部と、不倫相手の秋葉との恋愛がメインである。不倫関係に陥っていく男の滑稽さが全面に溢れてて、読んでいて苦笑してしまうこともあれば、赤面してしまうこともあるし、ちょっと恐ろしくなったりすることもあった。
別に私が不倫予備軍だと言っているわけではないが、なんだか他人事に感じられないのはやはり自分に少なからずの不倫願望があるからなのだろう。この本は、ヨメに飽きた妄想好きのアラフォー男子に、「そんなアホなことやめとけ」と諭してくるようである。
作中にも不倫に溺れていく渡部に、「そんなことやめとけ」と諭す新谷くんという友人がいるのだが、おまけとして巻末に新谷くんの外伝が収録されている。実は新谷くんもかつて不倫経験者だったのだが、その顛末をわざわざ後に付け足すようにしないで、本編に組み込めばいいのになと思ったけど、これは、ドロッドロの不倫ドラマにしないための作者の照れ隠しなのではないかなと思った。
ミステリー作家である自分が恋愛ドラマを書いているという違和感がそうさせるのか、過去の自分の経験を揶揄するためなのか知る由も無いが、私は勝手に後者だと思っている(笑)。