『R.P.G』 宮部みゆき 集英社

 千林商店街の古本屋に100円で売っていたので手に取った。私のとって宮部みゆきは2作目。1作目に読んだ『火車』同様、丁寧な書き方だなと思った。
 
 お父さんが殺され、いろいろと調べていくうちに、そのお父さんはネット上でも「お父さん」を演じ、バーチャル家族ごっこをして楽しんでいたことが発覚。ネット上のお母さん役である女性や、娘・息子役の若者が容疑者として挙げられ、作中のほとんどのシーンはその取り調べ室の中で進んでいく。
 
 はっきり言って、犯人は途中でわかってしまう。「火車」でもそうだった印象があるけど、伏線の張り方なんかがとても丁寧で、はいはいここに手がかりですよ~と言われているかのようだ。もっと乱暴に放り投げるぐらいのほうが面白いと思うのだが、それは宮部みゆきの凄さを分からない私が言うことではないようだ。
 
 この小説の本当の凄さは、犯人が誰かを当てるとかそういうのではなくて、最後のシーンの読者をも裏切る手法である。どんでん返しなんてものではない。あとがきで本人も書いている通り、ある意味ルール違反のようなこの手法は賛否分かれるようで、容疑者たちの丁寧な描写や個性を全面に押し出したセリフの言わせ方など、それら全てが「実は◯◯でした~」と言われたら、「うわ~ヤラレタ~」って言う肯定的な人と、「なんじゃそら」って言う否定的な人に分かれるだろう。
 
 私は正直後者であった。『火車』のときも、最後に「なんじゃそら~」と思ってしまった。こんな裏切り方するなんて、宮部みゆきってなんと性格の悪いオバハンなんだろうか(ファンの方すいません)と思ったぐらいである。しかし、それが宮部みゆきの手法であると知った今、完全に宮部みゆきワールドに飲まれてしまっていた自分に気付くのである。
 
 そういうことも含めて『R.P.G』だとすれば、この作品はすごいと思う。でも、例えばフェラーリのことを「すごい」とは思うけど、乗って楽しいかは別のことであり、フェラーリはフェラーリで認めるし否定も批判もしないけど、私はやっぱりBEETみたいな軽自動車のほうが好きだなあと思うのである。ま、そんな感じ(笑)。