イナカの余韻

 龍神村に住む嫁のおばあちゃんは91歳である。そんな高齢にも関わらず階段をスタスタ上り下りするし家事全般をテキパキこなす。ひ孫の面倒も良く見てくれて子供たちも大喜びだった。

 特に健康に気を遣っているというふうではなさそうなのだが、やはり田舎特有のノンビリとしたストレスフリーな暮らしが健康と長生きの秘訣なのだろう。

 ここには結婚前に一度来たことがある。

 もう随分前のことなのに、おばあちゃんの家の庭にある芝刈り機やクワやスキ、その他の農機具やホウキやチリトリまで全く同じところに寸分違わず置いてあり、本当に時間が止まっているようだ。

 「時間が止まっているんだからそりゃ長生きも出来るわなー」と思ってしまう。

 私は長生きに対してそんなに執着がある方ではないが、おばあちゃんのように田舎でノンビリ暮らし、早起きして作業をし、昼過ぎにウトウトし、晩に酎ハイを少し飲み、年に何度か各方面からやってくる孫やひ孫たちと遊ぶ・・・。そんな生活に憧れを持たないことはない。出来れば老後はそんな生活もしてみたいとも思う。

 そうやってゆっくりと生きることの意義ってもんが“イナカ”にはある。

 都会には生き急いでるヤツのなんと多いことか!

 毎日走る国道163号線なんて、死に向かってまっしぐらな人間のための道路である。ギリギリに幅寄せして私を追い抜いていくバカトラックを見るたびに思う。

 「絶対お前より長生きしたるからなー!」と。