充電済み

 ようやく不安定な空模様も解消されたようで、久しぶりの爽やかな秋晴れ。そろそろナマッた体に鞭を入れるべく自転車通勤再開。しばらく乗っていないとやたら乗りたくなってくるC59。それだけでも価値はあるっちゅうもんである。
 
 清滝スタート地点まで来た時に、前方に電動ママチャリが信号待ちしているのが見えた。ん…?あれはもしや…。
 
 清滝峠を定期的に登る方はご存知かもしれないが、時々何の変哲もない電動ママチャリに乗ったおばさんに出くわすことがある。私は勝手に「電動おばさん」と呼んでいる。この電動おばさんがなかなか強敵で、ウィンウィンとモーター音をさせながらヘタなローディーなどは軽く抜き去っていく猛者なのである。
 
 とっさに「これはマズイ!」という動物的防衛本能が働き、電動おばさんに気付かれないように少し離れて停車。信号が青になって電動おばさんがスタートしてからしばらく間を置いて私もスタート。付かず離れずで様子を見ながらヒルクライムを開始した。
 
 調子よく登っていく電動おばさん。序盤は平均15km/hぐらいでグングン登っていく。ちなみに序盤で15km/h出ているとゴールまで12~13分台である。恐るべし電動アシスト。いや、アシストのお陰だけではないだろう。ビシっと決まったまま動かない上半身なんかを後ろから眺めていると、このおばさんは出るところに出れば結構有名なスポーツ選手だったのではないかと思うほど。
 
 しばらくそんなペースで走り続けていると、当然しんどくなってくるのは私のほう。まあ離れていくのは構わないだろう。一度追い抜いたのに抜き返されるよりはマシである。なんとか自分のプライドは守れたな、と一円にもならんプライドを身にまとったままペースダウンしようとしたその時である。
 
 ジワジワと電動おばさんが落ちてくるではないか。あれよあれよという間に差は縮まり、最終的に10km/hを割るぐらいまでスピードが落ちた。私もさすがに10km/h以下で登るのも逆にしんどいので、恐る恐る電動おばさんを追い抜いた。追い抜き際におばさんの表情を除くと大変苦しそう。電動おばさんは私の視線に気付くと苦しそうな顔でこう言った。
 
 「電池切れた…」
 
 「そ、そうですか…」。電動おばさんと会話をしたローディーは私が初めてではないだろうか。
 

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