『サイタマノラッパー』 脚本・監督/入江悠 主演/駒木根隆介・みひろ他


 
 ごくごく少人数で、水面下で、細々と活動を続けている「映画部」。これまでに観に行った映画は『おっぱいバレー』、『SEX AND THE CITY』、『モテキ』など、何か先立つものがなければ観に行かないようなものばかりをチョイス。レイトショーで缶ビール片手にヘラヘラ観るというのがスタイルである。
 
 しばらく活動はしていなかったのだが、ある日マンションのポストを見ると、部長のスミオさんから大きな封筒が届いていた。中には『サイタマノラッパー』の1と2のDVD2枚と、便箋2枚に及ぶ手紙が。文面には色々と書かれていたが、要は、今上映中の『パート3』を観に行こうではないか。それまでにこの『サイタマノラッパー』の1と2を観て予習をしなはれ、ということである。
 
 「急にどないしたん!?」と言いたくなるぐらい、彼はこの『サイタマノラッパー』を推している。神推しである。スミオ部長の音楽の趣味はアイドル系だと勝手に決めつけていたが、ひょんなきっかけでこの『サイタマノラッパー』を知り、それ以来iPodはヒップホップのヘビーローテーションだと言うから改めて熱しやすく冷めやすい性格だなと思った。
 
 私はピップホップ系は守備範囲外である。いやむしろ敬遠していたぐらいだ。あのファッション、あの喋り方、あの動き、どうも好きになれん。おそらくそういうこともスミオ部長は知っていたはずなのだが、あえてこれを推してくるのは何か意味があるのではないか。これはもしかしたらドエライ映画なのではないかと思いつつ、封を開けずに1週間(笑)。なんとか先日の休日に『パート1』だけ観てみた。
 
 舞台は埼玉県の田舎町。ヒップホップで一旗揚げてやろうと妄想する青年たちの青春を描いている。当然のことながら全編にヒップポップが流れまくり、あのファッションの人間がバンバン出てくるし、普通のセリフまでもがラップ調であったり、敬遠していた者にとっては目を覆いたくなるような序盤だったが、我慢して(笑)観ているうちに免疫ができてしまい、中盤から終盤にかけて、どっぷりと彼らに感情移入してしまった。
 
 社会への不満、自由への疾走、将来への不安、未来への希望など、若者が熱く表現する方法の一つにラップがあるということだけで、それは尾崎でも浜省でもいいわけである。あのヤンキーちっくなファッションのニーチャンの見方がちょっと変わった。しかもラッパーは異常なまでに地元を愛している。

 「ここ、サイタマから、オレたちの、アツイ、マイソウルを、発信しているんだぜ」(ラップ調で読むとハマる)
 
 でも東京に出ることを夢見ている(笑)。矛盾しているように思えるが、ほとんどの若者の考えは矛盾している。ラッパーだけではない。私だって金もないのにTTバイク欲しいとか愛人欲しいとか言うてる。そんな矛盾をラップに乗せて、サイタマから発信しているのだ。宇宙人かよ(劇中のみひろのセリフ。気に入っている)。
 
 時間がなかったので『2』はまだ観ていないのだが、今度は女の子ラッパーのお話のようなので楽しみだ。明日は休みなのでゆっくり観てみよう。