にしやんのオススメ。まずはこの作品を紹介してくれたにしやんに感謝。とても楽しく読むことができました。おおきに。
首相暗殺事件の濡れ衣を着せられた30台男性が、巨大な陰謀に飲み込まれながら逃げ回るというストーリー。どこにでもあるハリウッド映画みたいな内容だが、大きく分けて5部で構成されていて、さらに登場人物目線でコロコロと場面が変わり、しかも10年前にさかのぼったり現代に帰ってきたりと読んでいて飽きない。
いろんな場面といろんな時代においてたくさんの伏線が張られ、物語が進むにつれてそれらが丁寧に包まれていく。あとがきには「張り巡らせた伏線を丁寧にまとめるのが自分の作風だったがそれもつまらないので、ある程度は読者に任せる形で適当に包みました」という感じのことが書かれているけど、いやいや十分丁寧ですよと言いたい。
先日読んだ『グラスホッパー』でもナイフ使いの殺し屋が出てくるけど、『ゴールデンスランバー』にも切り裂き魔が登場する。前回も思ったけど作者はナイフで人を切る描写がとても巧い。切ったことあるんちゃうかと思うぐらい。で、心の底から腐りきった殺し屋じゃなくて、ちょっと感情移入できる殺し屋だったりするのも特徴。
登場人物の会話が同じ文字数で書かれているところがちょくちょくあり、活字をビジュアルで美しく見せてるところも芸が細かいなあと思う。最後に参考にした文献やら協力してくれた人を挙げて感謝の意を表明しているところなんかも丁寧やな~って思う。
自分の中で、東野圭吾の『白夜行』越えたかも。文句なしの★★★★★でした。