『永遠の0』 百田尚樹 講談社

 昨日12月8日は太平洋戦争が始まった日。今から70年前、あの有名な真珠湾攻撃がありました。学生の頃、研修旅行でハワイに行かせてもらったことがある。あの頃は若かったので真珠湾を見てもピンと来なかったけど、それでも人間魚雷を見た時にはサブイボが立ちました。そんなことを思い出しながら読んだ本が百田尚樹の『永遠の0』。
 
 ここで言う『0』とは『ゼロ戦』のことで、主に大日本帝国軍のゼロ戦パイロットだった人たちの体験談を聞きながらストーリーは進んでいきます。戦況が苦しくなった戦争の終盤、大日本帝国軍は神風特別攻撃隊を編成して、ゼロ戦に重すぎる爆弾を抱えさせ、多くの若者たちを出撃させました。
 
 泣き言も言わず、勇敢に飛び立っていった仲間を見送る体験談は、読んでるだけで涙が出てきます。戦果を知りたい上層部は、パイロットにモールス信号を打つように命令。敵に突っ込むときは「ピーーーー」っと鳴らし続けろと命じたそうです。その「ピーーーー」の音を聞くたびにとても辛かったという元通信兵の体験談もあります。
 
 しかし実際には特攻はそれほど成果を上げず、敵艦隊に突っ込む前に攻撃されたり、粗悪燃料のせいで飛行中に故障して墜落するゼロ戦がほとんどだったそうです。つまり無駄死に。かわいそうです。当時の日本は狂ってます。でも当事者たちは真剣だった。
 
 この本を読み終わった日が、太平洋戦争の始まった日だということを偶然知って、なんかまたサブイボが立ちました。私は、単純に飛行機としてのゼロ戦が好きだったけど、これを読んで「好き」って言うのはなんか気が引けるようになりました。親や奥さんや子供を残して飛び立っていく若者の気持ちを思うとやりきれない。
 
 でもまあ、ストーリーがしっかりした上での体験談なので重すぎることもなく、戦闘のドッグファイトの様子なんかもあって軽快に読めます。★★★★☆でした。