「本田宗一郎と井深大展」

 昨日の12月24日は結婚記念日だった。まあ、そんなことはどうでもよい。

 以前から行こう行こうと思ってなかなか行けなかった「本田宗一郎と井深大展」にやっと行ってきた。
「そんなところに4ヶ月の乳飲み子を連れて行ってもどないやねん」という意見もあるが、なんせ本田宗一郎の名を名乗るものとして、そしてその親としてこれは行っとかなアカンやろ、ということでベビーカーを押して家を出た。

 僕はこのベビーカーというものが嫌いだ。まだ首も腰も完璧に据わっていない子供を乗せる為にはベッド型にしなければいけない。ベッド型にしたら子供の顔がこっちを向くようにしないといけないので、つまりべビーカーをずっとバックさせているように押す。そうなるとステアリング機能がついているキャスターが後輪にくるので、非常にコントロールが難しい。普通のコーナーリングが車庫入れしているみたいになる。早くお座りができるようになってもらいたいものだ。

 そんな困難な状況であるにもかかわらず、なぜか「ベビーカーを折りたたまずにどこまでいけるか」に挑戦してみたくなった。改札やホームまでの階段、電車の中、梅田に着いてからの人ごみの中・・・。「バリアフリー」がさけばれる昨今、お年寄りや車椅子の方々、そしてベビーカーごと子供を担ぐことができない女性の為に本当に「バリアフリー」ができているのか確かめてみたくなったのである。

 結果は散々だった。いや、バリアフリーが整っていないというわけではない。改札からホームまでのエレベーターは設置されているし、スロープだってある。ただ単に僕がベビーカーに慣れていないせいで人ごみをかき分けるのにかなり苦労したのだ。しかも「宗一郎展」をやっている梅田スカイビルまで、かなり歩かないといけなかった。着いた頃にはふらふらになっていて、受付のおねーさんの「恐れ入りますがベビーカーは入場できません」という言葉が天使の声のようだった。
 出発したての元気なころは、もしそんなことを言われたら「こいつは宗一郎って名前なんじゃ〜」とでも言ってやり、無理矢理にでも「ベビーカー折りたたまないルール」を敢行してやろうと思っていた。

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p> 「本田宗一郎と井深大展」は、そんな親の気も知らずにスヤスヤと眠る息子の態度に「せっかく連れて来たったのにどないやねん」という思い出しか残っていない。