お客さんにこの質問をされると非常に困る。
「このクルマあとどれぐらいもつかなあ?」
クルマ屋さんの一員としてやはり新車を薦めることは当然のことだし、しかしクルマを修理する仕事をするものとして修理を薦めるのが正しいとも言える。この質問をされたとき私は心のなかでこう言う。
「知るかい!」
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p> ロクにメンテナンスもせずボロボロになり、車検も明日切れるぐらいに乗りつぶしたクルマを持って来て「あと2年乗れるかなあ」と聞くヤツにはクルマに乗る資格は無い。
古いクルマを大切に乗り続けている人を私はたくさん知っている。そんな人たちも車検が来る度に私に「車検してあと2年乗れるかなあ」と聞いてくる。
しかし長く大切に乗ってきたクルマをそう簡単に手放すことなんて出来ないはずである。そう聞いてくる人の心はもうすでに決まっている。また車検して乗り続けるのだ。あと2年乗れるかどうかと言うよりも、そんなボロいクルマを車検することによる「そろそろ乗り換えろや」「もうええやろ」的な周囲の目から守ってもらえる応援団が欲しいのだと思う。
そんな人たちには私は車検を薦める。2年と言わずこれからもずっと乗り続けて欲しい。私の技術がクルマとの付き合いを永らえさせるなら大いに協力したい。それはある意味メカニックの本望でもある。
クルマなんて大切に乗ればいつまでも乗れる。「あと2年乗れたらいいから」というのは間違っている。クルマの寿命は人間のように自然に訪れるものではなく、そのクルマに乗っている人次第で変わる。生かすも殺すもオーナーの思いやりひとつなのだ。