ぼくのおとうさん

 ぼくのおとうさんは、じどうしゃのせいびしをしています。だけどおとうさんは「メカニックとよべ」といいます。ぼくはどちらでもいいとおもうのですが、「せいびし」と「メカニック」はレベルがちがうそうです。うでのいいメカニックは、さぎょうふくがよごれないそうです。たしかに、おとうさんのさぎょうふくは、いつもきれいです。ぼくは、しごとをさぼっているだけかとおもっていましたが、ちがうようです。このまえおかあさんが、おなじことをおとうさんにききました。「ふくもよごれてへんし、てもきれいやし。ホンマにしごとしてんの?」
 そのあとおかあさんは、おとうさんにめちゃくちゃおこられていました。だからぼくは、きかないようにします。おとうさんがこわいからではありません。おとうさんは、うでのいいメカニックだとおもうからです。


 ぼくのおとうさんは、ぼくをまいにちおふろにいれてくれます。おとうさんが、よっぱらっていないときはたのしいのですが、よっぱらっているときはいやです。ぼくに、おゆをアタマからぶっかけるからです。おゆがめにはいったり、はなにはいったり、くちにはいったりしてくるしいのです。ぼくはおおきなこえでなくのですが、「これぐらいのことでないてたら、およがれへんぞ」といいます。ぼくはまだあるくこともできないのに、およぐのはまださきでいいとおもいます。


 ぼくのおとうさんは、ときどきおかあさんとケンカして、じてんしゃをかついでそとにでていきます。どこにいくのかしりませんが、だいたい10ぷんほどでかえってくるので、そんなにとおくにはいってないとおもいます。


 ぼくのおとうさんは、ぼくがスーパーのレジのおねえさんとなかよくしていると、かならず、よこはいりしてきます。せっかくぼくとなかよくしているのに、おとうさんがはいってくると、そこでぼくとおねえさんとのじかんがおわります。おとうさんはむかしモテたらしいですが、おねえさんのリアクションをみるかぎり、うそだとおもいます。


 ぼくのおとうさんは、ほんをよんでくれます。だけど、「あめにもまけず、かぜにもまけず」って、ぼくにはなんのことかわかりません。しかもまいにちです。さいきんおとうさんは、ほんをひらかずに、「あめにもまけず、かぜにもまけず」とよんでいきます。どうやら、あんきしてしまったようです。


 ぼくは、そんなおとうさんが、だいすきです。