私の会社は阪奈道路沿いにあり、クルマの通行はもちろんだが、ロードバイクの通行も大変多い。
近くに奈良競輪場があるせいか、3〜4人ぐらいのグループが後ろにのみブレーキをつけたピストでロード練をしているのを良く見かける。
私もピストを所有していながら競輪のことは何も知らないので、彼らがどんなレベルの選手なのかとか、どんなスペックのバイクに乗っているのかなんてことは全くわからないが、阪奈道路が良いトレーニングになることはハッキリと断言できる。
普通のロードバイクを購入する前は私も彼らと同じ道をピストで通勤していたのだが、阪奈道路をピストで走ると、自分の「足の無さ」が良くわかる。上り坂は重いままのギヤをグングン踏んでいかないと倒れてしまうし、下り坂はバックトルクにより容赦無く高速回転するペダルを押さえつけないといけない。
クルマで言うところの、エンジンのパワーバンドが広くないといけない。パワーバンドが狭い、高性能ミッションだけが頼りの軽自動車エンジンでは、すぐにエンジンストールか、はたまたオーバーレブしてあっという間にエンジンブローのどちらかである。
昔、レーシングカートで遊んでいたことがあるが、カートもピストに良く似ている。エンジンのクランクシャフトに直接スプロケットがついていて、チェーンを介してリヤのアクスルシャフトに動力を伝える。エンジンはレギュレーションでパワーが決まっているので、トップスピードやコーナーの立ち上がり加速など、ギヤ比の設定のみでセッティングをする。スタートは押し掛け、止まればエンスト、まさにドライバーのウデのみが試されるそのシンプルさを美しく思った。
ピストに乗ると、そのシンプル過ぎるぐらいの構造と乗り味に、自分の「余計な物」に気付かされる。ボトルゲージなんてつけようと思わない。メーターもいらないし、ライトもいらない。バサバサする上着もいらないし、余分な体脂肪もいらない。
時には乗り手さえいらない、と感じることもある。シンプルな美しさを持つモノは、置いてあるだけで絵になる。
・・・そんなことを言い訳にしながら、私のピストはさらにホコリをかぶっていくのである。