(よ)さんの家にお邪魔して呑んでいた。
御存じの方も多いと思うが、彼はオーディオマニアで、彼の自宅のオーディオシステムはシロートの私が見ても「なんだかスゲー」と思わせる(ていうかシロートだからこそそんな感想しか出ないのかもしれないが)。
一目見て「こりゃー高い」とわかるオーディオ機器、そして非常にコダワリを持ってセッティングされたと思われる自作スピーカー、そんなシステムから再生される音楽は、酔いをさらに加速させるような、まさに「酔わせる音」だった。
本人に言わせるとこれでもまだ「6割」の完成度らしくて、実家にあるシステムはもっとすごいらしい。
私も一時期オーディオに凝っていたことがあった。市販の安いスピーカーを部屋のいろんな位置に移動させたりして音の変化を楽しむというぐらいのレベルではあったが、満足のいく音になったときは、まるで自分がオーケストラピットの中にいるような気さえしたもんだ。
だけど、例えばピアノの音を忠実に再現できるのは結局のところそれはやっぱりピアノなわけで(それはもちろんトランペットでもドラムスでも何でも)、突き詰めていけば「イイ音」っていうのは「生音」だと私は思う。それを言ってしまうと元も子もないけど。
お金が無いという理由をそんないいわけで正当化して、私は自分で演奏する側に回った。何十万円ものスピーカーから再生されるギターの音より、たった3万円の安いギターから出るヘタな和音の方が、私にとっては何十倍も「イイ音」だった。
そんなハナシを2人で夜中の3時過ぎまで呑みながらしていた。ホントに時間の経つのを忘れてしゃべっていた。その間ずっと、(よ)さんのオーディオはジャズを流し続けてくれていた。
「時間の経つのを忘れる」
これが一番贅沢な時間の使い方なんだろうなと思った。そして「時間を忘れさせる」ことがいいオーディオの存在価値なのかもしれない。