小学生の頃、いろんな流行り事があったが、その中の一つに「スニーカーブーム」というのがあった。アシックスやアディダス等、いろんなスニーカーを親にねだって買ってもらい、それを学校で自慢するというブームである。
私の家も貧乏ながら靴は買ってくれていたのだが、それでも金持ちな家のヤツはアシックスの最新型とかアディダスのかっこええのとかを見せびらかすので、常に自分の履いている靴に対して何だか劣等感のようなものを抱いていたように思う。
そんな中、私の叔母がハワイ旅行に行った。お土産は何がいいかと聞かれたので私は即座に「くつ!」と答えた。どんな靴を買ってきてくれるのかと、それはそれはもう期待で胸がいっぱいで夜も眠れなかった。あのハワイである。あのハワイで買ってきてくれるのである。当時小4の私にとって「外国のモノ」がどんなに素晴らしいものか想像もつかなかった。これであの金持ちヤローと互角に渡り合える。
叔母が買ってきてくれた靴には、見たことも無いマークが縫い付けられてあった。テストで正解ではなかった場合に付けられる「ピン!」みたいな。でもとにかくそれは外国産の日本ではまだ販売されていない超レアな靴には間違いない。デザインは私好みではなかったが、次の日早速学校に履いて行き、自慢した。ところが・・・。
「なんやお前ソレ、ナイキやんけ〜」
「ハワイ!?ナイキなんか参番館(地元のスポーツ用品店)でも売ってるわ(笑)」
私の妄想は金持ちヤローのこの言葉でガラガラと崩れ去り、もう二度とその靴は履かなかった。それ以来私はナイキが嫌いになった。
昨日ハラちゃんと、梅田辺りをぶらぶらしている時にナイキショップがあったので入ってみた。ナイキショップに置かれている斬新なデザインのナイキスニーカー達は非常にかっこいい。思わず買おうかなと手に取ってしまう(17000円という値札を見てすぐに置いたが)。
しかしナイキのスニーカーを見るたびに小学校時代のあの思い出が蘇ってくるのだ。
私がナイキを履けるようになるには、もう少し時間が必要である。