パパの気持ち

 息子を連れて近所のジョーシンに行って来た。特に何を買うわけでもなく、ただ涼みに行っただけ。まあオモチャも売ってるし子供を連れて行くにはベストなスポットかもしれない。

 小一時間ほどブラブラして、そろそろ帰ろうかと思ったけど、せっかく来たのに何も買ってあげないのはかわいそうなので、トミカを一台買ってあげることにした。300円ぐらいのもんだし。

 ズラーっと並ぶトミカの前に息子を立たせ「ひとつだけ買ったる」と告げるとその瞬間、瞳が輝き、頬が赤らみ、全身の筋肉が躍動を始めたようで、気が狂ったようにトミカ売り場を往復し始めた。

 ところが大量に並ぶトミカの中から一台だけを選ぶことがかなり困難なようで、どれにするか決めあぐねている様子。私の方をチラ見しながら「これもいい?」みたいな表情をし、小さな手に4箱のトミカを握っている。

 「アカ〜ン。ひとつだけや」

 しかもその4台全て、既に持っている車種である。私は息子の手からトミカを奪い、元あった所へ戻した。息子は明らかに落胆している。息子はしばらくその場をウロウロしていたが、何を思ったのか私の手を引いて出口の方へ向かった。

 「ぱぱぶー!(パパのクルマに乗る!)」

 なんや。何をスネとんねん。清掃車でもブルドーザーでもリフマグ油圧ショベルでも何でも買うたるって言ってるやん。確かに分かるよ。お前の気持ちは。あれだけある中から一台だけ選べったってムリやわなー。でもパパの小遣いやったら一台が精一杯やねん。おおそうや!ジイジに買ってもらえ。もうすぐお前の誕生日やから好きなだけ買ってもらえるぞ。ていうかオレの誕生日も近いからコルナゴ買ってくれるようにお前から頼んでくれへんか?イヤイヤオレからは言われへんて。お前が言う方が効果あるって。ていうかお前がコルナゴ買ってもらえや。お前が自転車乗れるようになるまでオレが乗っといたる。コラコラ寝るな。パパのハナシを聞かんかい。

 ・・・おやすみ。