従弟結婚

 従弟の結婚式に出席した。親族の披露宴では恒例となりつつある“おじさんバンド”に、なぜか従兄弟である私が参加することになり、本人の希望であったビートルズの『Love me do』を演奏した。まあ簡単な曲なので練習回数が少なかった割には、本番もそつなくこなすことができたのではないかと思う。
 
 彼は私より10歳若く、彼が学生の頃は一緒に自転車に乗ったり、彼のアルバイト先の焼鳥屋へ食べに行ったりして遊んでいた。ところがどういうわけか、急に大学を辞めてアルバイト先の焼鳥屋へ就職すると言い出した。
 
 彼の親(つまり私の叔父と叔母)は大反対、彼の兄も兄嫁もみんなに反対され、なんとか大学卒業まで頑張れと言われ続けていたようだが、結局自分の意思を尊重して大学を辞めて福井県にある某焼鳥屋本社へ入社したのである。
 
 私もその話を聞いた時には、「もったいない」「アホやの~」などと思ってしまったものだが、彼は福井の地で頑張り、そこそこの仕事を任されるようになり、そして福井では有名な某ブライダル会社の社長令嬢と知り合い、今日の結婚に至ったのであるから人生はわからないものである。
 
 「大学を中退する」という事態はなんとしてでも避けなければならない事柄のように思えるが、自分の手で人生の道を切り開いて行く素晴らしいきっかけになったのだと思えば、あながち悪いことばっかり、というわけではなさそうである。
 
 人生の先輩である親や兄姉や周りの人間からどんなにアドバイスを与えても、こういう例を見せつけられると我々の人生で得た経験や教訓なんて、バイタリティあふれる若者にとっては一銭の価値もないのではないかと思えてくる。
 
 そしてそのバイタリティは周囲の人間を惹きつけるのだろう。素晴らしい仲間に囲まれて祝福される彼を見ていると、改めて自分自身の人生はこれでいいのかと振り返ってしまったではないか。
 
 人生は分かれ道の連続である。どの道を選べばいいかなんてその時はわからない。でも、どの道を選んでも「選んで良かった」と思えるようにするために、日々の努力と感謝を忘れずに生きていきたいものである。