これまた長文です。酒でも飲みながらお楽しみ下さい。
先日の記事にもチラっと書きましたが、クルマも自転車も、エンジンとシャシのバランスがとても大切であることは周知の事実であります。ちなみに「シャシ」というのはボディやらサスペンションやらタイヤやら、エンジン以外の全ての部分のことをまとめてそう言います。「シャーシ」とか「シャシー」とかの呼び方もありますが、ここは教科書通り「シャシ」で統一したいと思います。いろんな解釈があるとは思いますが、そう習ったんやからしゃーないやん、ということで毎度のことながらツッコミは禁止とさせて頂きます。
私はホンダのディーラーで働くシガナイ整備士ですが、友人知人親兄弟親戚紹介等々の諸事情により他メーカーのクルマも修理させて頂く機会があります。コレがなかなかホンダマン泣かせ、・・・イヤイヤ、光栄なことでございまして、それぞれのメーカーの考え方や信念などを垣間見ることが出来る良いチャンスだったりするのです。
先日も6000ccものバカデカイエンジンを積んだアメ車を触らせて頂く事がありましたが、やはりそれだけのエンジンを積むシャシってのはモノスゴイ頑丈に作られているものでありまして、国産車ばかりをイジっていると考えもつかないような部分に補強が入っていたり、ドラム缶を横にしたようなタイヤが装着されていたりするのであります。エンジンを始動し、空ぶかしを一発カマしただけでマフラーから100円玉がチャリンチャリンと飛び出していくかような燃費の悪いエンジンであるにも関わらず、アメリカではそういうクルマがフツーに走っているのであります。それらは当然アメリカの交通事情や石油価格などがそうさせたわけで、例えば雨の少ないイギリス車にはオープンカーが多かったりするのであります。
さて、自転車の話に移ります。
これら「御国柄」が如実に表れる例に、自転車はバッチリクッキリ当てはまるものだと自動車整備士国家資格所有者(ひつこい)である私は確信しております。
冒頭でも書きましたように、エンジンとシャシの関係は最重要項目でございます。エンジンは“日本人”以外に選択不可能ですから、シャシ、つまり自転車本体の選択を慎重に行う必要があるわけです。ここをミスっていらっしゃる方が意外と多いのではないかと私は思っておる次第であります。
コレをお読みの自転車仲間の皆様の中には賢明な方がたくさんいらっしゃいますのでそういった類のミスには心配御無用かと思いますが、先日行われました鈴鹿での8時間耐久レースなど大型イベントでは、エンジンがコッテコテの日本人であるにも関わらず、バッリバリのアメ車であったり、ビッカビカのイタ車に乗っている方が結構いらっしゃるのです。私は別にアメ車やイタ車を否定しているわけではございません。自転車の楽しみ方の一つに「所有のヨロコビ」というものがございますので、アメ車やイタ車、その他庶民では到底手の届かないような自転車に乗っておられ、ゆっくりと楽しんで走っていらっしゃる方々は、おそらくそういう自転車の楽しみ方を満喫されているのだと思われますので、「ほっとけや」と言われましても私は何の文句も言い返せないわけであります。
しかしながらこれまた先日も書きました通り、私は息子に創設者の名前を付けてしまうほどのホンダ党であります。エンジン、シャシ共にバランスの取れた国産車の中でもさらに高次元でバランスされ、効率の良いパワーの出し方を徹底しているホンダ車のファンと致しましては、やはり「走ってナンボ」だと考えるのです。自分の持つエンジンパワーと、シャシである自転車とが高次元でバランスしながら走行することが最も速く走る方法であると考え、どちらか一方が飛び抜けていてもそれは「ホンダ的」に申しまして、「違うんだな〜」なのであります。
というわけで、「自分に合った自転車選び」が大切でありまして、そんなことはどこの自転車雑誌を見ても書いていることなのでありますが、「今さらそんなこと言われても買い換えられへん」方が私を含めて多数いらっしゃいます。またパーツひとつ取ってみても非常に高価な物が多く、少ない小遣いをやりくりしているサラリーマンにとって、それらの選択ミスは絶対に許されることではございません。
昨今の自転車ブームによりまして、本屋に足を運べば自転車雑誌は山の用に販売されており、それらのページをパラパラとめくると魅力的な自転車やパーツが溢れるほど掲載されております。しかし、そんなものに惑わされてはいけません。自分のエンジンに合わない間違ったシャシ選びをしないためにも、「自転車は走ってナンボ」ということを忘れないで頂きたいと切に願うのであります。幸いにも「売るだけ」の自転車屋さんは少ないように思います。買ってもらった自転車を最大限に使って頂けるように様々なイベントを提案してくれるお店がほとんどです。そういったイベントを最大限に活用し、乗って乗って乗りまくって頂きたい。そうすれば自ずと「自分に合うモノは何か」がわかってくるものでございます。
私も「コルナゴ欲しい」とか「カンパレコード」欲しいとか申しておりますが、先日333.33kmを走破した時に思いました。「コレでええんやな」と。私のエンジンはラッキーなことに今乗っている自転車が相性バツグンなのでございました。自転車選び、パーツ選びに迷っている方がいらっしゃいましたら、とりあえず乗って下さい。走って下さい。外人や金持ちの真似はしなくても良いのです。補助輪無しで走ることの出来たあの日の感動を思い出して下さい。自転車はそういうモンなのであります。
エンジンは机上で設計することが可能ですが、シャシは不可能です。ホンダでさえ、わざわざドイツのサーキットまで持ち込んでテスト走行を繰り返すぐらいですから。