夜景

 夜景が好きな女性は多い。嫁もそのうちの一人。付き合っている頃は行く所に困ると夜景を見せた。それで機嫌が良くなるのだから安いもんである。でも私は夜景がそれほど好きではない。イヤ別に嫌いってわけでもないけど、巷の女性ほどに「大好き!」ってわけでもない。

 だいたいデートで夜景を見に行くなんて男にとっては苦痛以外の何者でも無い。わざわざクルマを高い山のてっぺんまで走らせ、寒いのにクルマから降りて都会の電気の集まりを眺めるのだ。さっさとどこかのホテルにでもシケ込みたいところであるが、なかなかそうはいかない。女もそれを知ってか知らずか夜景を堪能した後は「さあ帰りましょ」的雰囲気丸出しである。

 それでも「夜景スポットの1つや2つ知ってないとモテない」などという、ドコの誰が言ったかわからない言葉を信じ、「自分だけの夜景スポット」を探したものである。「ココはオレの秘密の場所やねん」と案内したのはいいが、「ココ来たことある〜」なんて言われること数知れず。それでも諦めずに夜な夜なガソリンを消費した時期があった。

 今はもうそんなこともしなくなったが、自転車で山を登るようになり、タマタマあの頃必死に探した「夜景スポット」の近所を通ったりすると、たまらなく懐かしい気分になってしまうことがある。

 今になって思うと、「夜景はモテるためのアイテム」だと考えていた自分が滑稽である。

 仕事帰り、清滝峠から下る際に見える大阪市内の夜景は素晴らしい。まるで宝石をちりばめたかのようにきらめき、そして数分後には自分もそんな夜景の仲間入りが出来るのだ。オッサンになると夜景の見方も変わるもんである。

 そんな気持ちをあの頃に持っていたなら、もうちょっとモテていたかもしれない。