記憶

 先日、花束を買っていた時のこと。

 適当に見繕ってもらって花束が出来るのを待っていると、急に後ろから声をかけられた。

 「Mさん?Mさんですよね?」
 「へっ?あっ、ハイ・・・」

 なんか見たことある顔。どこで会ったのかわからない。もちろん名前なんか出てこない。そんな困惑している私の様子なんかおかまいなしに話しかけてきよる。

 「久しぶりですね〜。今何やってるんですか?」
 敬語で話しかけてくるところをみるとどうやら私より年下。
 「バレー部の皆さんは元気ですか?」
 バレー部?高校の時の後輩か?
 「シノハラが結婚するんですよ〜」
 誰やねん。ていうかお前誰やねん。

 突然話しかけられることに加えて、相手のことを完璧に思い出せない、プラス花束を買っている所を見られたという、普段滅多に無いことが一気に押し寄せてきたことにより軽くパニック状態。花束を受け取ったら「じゃあまた今度・・・」と言ってそそくさとその場を後にした。「今度っていつやねん」と自分で自分にツッコミながら。

 ああいう時の応対の仕方がよくわからん。今になって思えば「ごめん、名前が思い出されへんねん」とか「バレー部の後輩やったよね?」なんて聞けたのに、意外とオレって気が小さいんだなと思ったよ。

 そういえばアイツ、私のクリート付きのシューズを見て「自転車乗ってはるんですか?」って言ってた。アイツも自転車乗りか?それとも自転車乗りが身近にいてるのか?

 ・・・わからん。未だに思い出せない。

 誰やね〜〜ん!