力の方向

 仕事柄、事故車を目の前にして修理の見積りをしたりすることが良くあって、単純に正面からぶつかっている(もしくはオカマを掘られている)クルマに関してはある程度見ただけで見積りはできるのだけど、例えば交差点で出会い頭にぶつかったクルマなんかは、事故をしたときの速度とか力の入力方向を良く考えて見積りしないと、思いも寄らない所が損傷していたりすることもある。最近のクルマは「つぶれることによって衝撃を吸収する」という考え方に基づいて設計されているのでなおさらである。

 こっちからクルマが突っ込んできて、まずはバンパーに当たって、ヘッドライトが割れて、バルクヘッドが押されて、ビームに引っ張られてフェンダーがズレて、うーんボンネットのヒンジも交換せなあかんなあ。という感じ。なんとか力学なんかを駆使するわけじゃないけど、力の加わり方を追っかけていくのはなんだか楽しく感じるのはジブンだけだろうか。

 そんなことを考えながら自転車に乗っていると、自転車って基本的にみんな三角形を二つ組み合わせた形をしているけど、コレってほんとに理に適った形やなあと心から思う。

 思いっきりペダルを踏み込んだ下半身の力や、思いっきりハンドルを引き付けた上半身の力が、どこからどこをどのように通って、最終的に前後に二つある小さな小さな路面との接地面に伝わるのか。逆に路面からの衝撃も上手に分散させている。コーナーリング時や加減速時、ありとあらゆる力がかかっている。エライもんやなあと思わないですかい?

 「シリンダー内での爆発が最終的にタイヤに伝わるまでの部品名を全て挙げなさい」って問題が専門学生の時にあったけど、はっきり言って真面目に全部書いてたら答案用紙が足りない。でもおもしろい問題だと思う。

 こんなことばっかり考えながら自転車に乗っていたら、「人はどこから来てどこへ行くのか」。そんな答えの無さそうなことでもパっとひらめいたりして。それはないか。

 しょうもないひとりごとでした。